第1回:すばる望遠鏡との出合い

「本物だ!」私は目を見開いてディスプレイを凝視していた。しかし、いたたまらなくなり立ち上がって叫んだ「ああーーー」。隣室にいた同僚のジャニス・リーさんが、奇声を耳にするやいなや、私のオフィスを心配そうに覗き込む。「Are you OK, Masami?」。2008年2月、カーネギー天文台で古代の巨大天体を発見した時の一幕だ。

 この時発見したのは、後にヒミコと名付けられる天体である。130億年前の古代の宇宙にありながら、現在の銀河と同じくらい大きい。それまでの観測で同時代に見つかっていた銀河より10倍大きい。古代の宇宙では小さい銀河しか存在しなかったという常識を覆す発見だった。宇宙を研究していると、こういう発見の場面に遭遇する。数年に一度くらいだろうか。発見の感動と興奮はいかなるものにも代え難い。だから宇宙の研究はやめられない。

原始地球の想像図。私が読んだ本のイラストとは異なるが、このような感じの図だった。(art by Don Dixon
[画像のクリックで拡大表示]

 私と宇宙の出会いは、小学1年生のときに読んだ1冊の本だった。そこに描かれていたのは、46億年前というはるか昔に起こった、地球誕生の様子。宇宙に浮かぶ岩石の惑星に、やがて大気ができ海が生まれたことが、イラストを使って解説されていた。私は本を読んだ直後、感動のあまり涙が止まらなくなった。そばにいた母親に泣いているのを見られたくなかったので、ベランダに飛び出した。そして、ベランダで目にした草木の緑の美しさと、本に描かれた漆黒の闇に浮かぶ、岩石だらけで隕石が降る原始地球との違いに、さらに心を揺さぶられたことを覚えている。

 今振り返ってみると、普段の生活では想像できないような大きさと時間に感動を覚えたのだと思う。自分自身とは比べものにならないほどの地球の大きさ。そして40数億年という想像もできない悠久の時。これら2つに魅せられたのである。

 そして今の私は、宇宙における「大きさ」と「時間」にかかわる研究をしている。私の研究対象は、一言でいうと“宇宙の歴史”だ。138億年にわたるその歴史を、宇宙の大きさを利用して調べている。