最終回:より遠く、より昔の宇宙への挑戦

 ここではUDF12とHFFの研究しか紹介できなかったが、研究室の学生と若手研究者が原動力となり、多くのプロジェクトから素晴らしい発見がもたらされている。これらを報告する論文を書くのも忙しく、嬉しい悲鳴をあげているのが現状だ。こんな熱心な若者たちに囲まれて研究できることを私は誇りに思っている。

 さて、これからの「宇宙の果て」をめぐる研究はどうなるのだろうか? まず、すぐにでもやるべきことは、すばる望遠鏡の主焦点カメラSuprime-Camの次世代装置、超広視野主焦点カメラ(HSC:Hyper Suprime-Cam)を用いた研究だろう。2014年から始まったHSCによる探査で、これまでのSuprime-Camの観測より10倍以上のデータが得られる予定である。現状でも第2、第3のヒミコが見つかりつつあるのだが、今後はHSC探査によって、ヒミコのような天体を数十個くらい見つけ、これらの統計からヒミコの謎に迫ることができるだろう。

すばる超広視野主焦点カメラHyper Suprime-Cam (HSC)の写真(右)とすばる望遠鏡の模式図(左)。(画像:国立天文台
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 世界に目を向けると、ヨーロッパのVLT望遠鏡のMUSE、米国のケック望遠鏡のMOSFIREといった素晴らしい最新装置が登場している。これらにより、宇宙の果てにある天体の観測研究が日進月歩の勢いで進んでいる。

 そして、大きな期待を集めているのが、2018年10月に打ち上げ予定のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)である。JWSTはハッブル宇宙望遠鏡の後継であり、主鏡が6.5mと大きく、現在稼働しているどの光赤外線望遠鏡よりも暗い天体まで検出できる。これにより、すばる望遠鏡はもとより、ハッブル宇宙望遠鏡でも到達し得なかった、134億年より昔の宇宙が見えてくるだろう。特に宇宙最初の星や銀河(初代星や初代銀河)ができたと考えられている134億~136億年前の宇宙が見えると予想されており、宇宙で天体が初めて誕生する様子が捉えられるかもしれない。JWSTの打ち上げが成功し、期待通りの性能が出たならば、天文学に大きなパラダイムシフトが起こるのは間違いない。

JWSTの完成予想図。ハッブル宇宙望遠鏡などとは違い、主鏡が宇宙空間に曝されている。その代わりに大きなサンシールドを下側に付けて、太陽光に邪魔されないようにしている。(画像:NASA)
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