A博士との話はこれくらいにして、アルマ望遠鏡でのヒミコの観測の話に戻ろう。アルマ望遠鏡での観測方法は、ハッブル宇宙望遠鏡(連載第6回参照)と似ている。フェイズ2と呼ばれる観測手順データを作り、天文台に送っておく。あとは、観測に適した日になると、チリにいるアルマ天文台のスタッフが手順に従って望遠鏡を操作して、観測を行う。観測者がアルマ天文台に行く必要はない。ハッブル宇宙望遠鏡は、地球軌道上にあるから仕方がないとしても、アルマ望遠鏡も同様に自らの手で観測を行わないシステムになっているのだ。

 このようにして2013年2月、私たちの観測データがインターネットを通じてアルマ天文台から届けられた。このデータを見て、私の目は点になった。何も写っていない…。シグナルらしいものがないのである。しかも観測が難しいと思われた炭素ガス起源の電波だけではない。余裕で検出できるはずのダスト起源の電波も検出されていなかった。私は肩を落とした。アルマ望遠鏡の観測によって、ヒミコの中のガスの運動などを調べようと思っていたのに、電波が全く検出されないのだから、そんな研究は行えない。

 だが、研究者は往生際が悪いものだ。私も例外ではない。まず私は、受け取ったアルマ望遠鏡のデータがおかしいのかもしれないと思って、いろいろなチェックをした。しかし、どう解析してもおかしな部分は見あたらない。このアルマ望遠鏡のデータは、A博士がIRAMで得たデータよりも10倍以上も感度が良いのだ。それにもかかわらず、電波が検出されない。これには何か理由があるのではないか? 私はそんなことを考え始めるようになっていた。

ヒミコをアルマ望遠鏡で観測した結果(ダスト起源の電波を狙ったもの)。中心にある白色の十字の位置にヒミコがある。黒と白の部分は、電波強度がプラスとマイナスの部分を意味する。黄色線と黒線はそれらに対応する等高線。ヒミコの位置では弱いプラスとマイナスが混在しており、シグナルが検出されていないことを意味する。(図: Ouchi et al. 2013, ApJ, 778, 102より転載。This figure is reproduced by permission of the AAS.)
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