第6回:ハッブルが明かしたヒミコの三つ目

 ひやっとする場面はあったが、期待通りハッブル宇宙望遠鏡の画像データが取れた。観測後にSTScIのサーバーに置かれた画像データをダウンロードした。初めて画像データがディスプレーに映し出された時、すばる望遠鏡の画像では想像できないほど細かい内部構造が見てとれた。「なんだこれは?」というのが、その時の印象であった。しっかりとデータを解析してみると三つの星の集団が一直線に並ぶ姿が現れたのだった。

 上で述べた五つの可能性のうち、星の集団が一つではないことから、「(1) 一つの巨大な銀河」ではないことがわかった。さらに真ん中に一つだけ卓越した光源があるわけではないので、「(2) 巨大ブラックホールが存在している」ことも考えられないだろう。ハッブル宇宙望遠鏡の観測結果により、(1)や(2)の可能性はなさそうだとわかった。特に「(1) 一つの巨大な銀河」の可能性がなくなったことで、一般に受け入れられている宇宙論モデル(初期の宇宙には小さい構造しかない)と大きく矛盾しないことがわかった。そして、三つの星の集団から、衝突・合体中の銀河である可能性が高まった。しかしこの場合は非常に稀な三体合体を考えなくてはならない。本当に三体合体でよいのだろうか?

ヒミコのハッブル宇宙望遠鏡画像とすばる、スピッツァー望遠鏡の画像を3色合成した写真。ハッブル宇宙望遠鏡のWFC3カメラの近赤外線を緑、すばる望遠鏡で捉えたライマン・アルファ輝線を青、スピッツァー宇宙望遠鏡で得られた赤外線を赤で示す。
ヒミコのハッブル宇宙望遠鏡画像とすばる、スピッツァー望遠鏡の画像を3色合成した写真。ハッブル宇宙望遠鏡のWFC3カメラの近赤外線を緑、すばる望遠鏡で捉えたライマン・アルファ輝線を青、スピッツァー宇宙望遠鏡で得られた赤外線を赤で示す。
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大内 正己(おおうち まさみ)

1976年、東京都生まれ。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。理学博士。アメリカ宇宙望遠鏡科学研究所ハッブル・フェロー、カーネギー天文台カーネギー・フェローを経て、現在、東京大学宇宙線研究所准教授。東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構の科学研究員を併任。研究テーマは、宇宙史初期、銀河形成、宇宙の大規模構造、観測的宇宙論。平成19年度日本天文学会研究奨励賞、平成26年度文部科学大臣表彰若手科学者賞などを受賞。平成25年にBeatrice M. Tinsley Scholarに選出。著書に『宇宙の果てはどうなっているのか? ~謎の古代天体「ヒミコ」に挑む』(宝島社)や『宇宙』(小学館の図鑑NEO)などがある。