別の埋葬室が隠されている?

 クフ王と彼の父スネフェル王は、親子2代にわたって、ピラミッドの上部構造内に埋葬室を設けている。これは当時、革新的な試みだった。この時代、王は神と見なされ始めており、その関わりから、地下ではなく、天を目指して上へ上へと埋葬室を持ち上げている。

 興味深いのは、王の間の天井の梁(はり)にはひびが入っている点だ。このひびは、ピラミッドの建設中に入ったと考えられている。その結果、王の間の安全性が危ぶまれたため、別に埋葬室が設けられたのではないかと考える研究者もいる。もしそうなら、今回発見された空間が、その埋葬室にあたる可能性はある。その場合、30メートルという長い部屋は考えづらいため、前室と埋葬室のように、複数の部屋から成っているのかもしれない。

王の間の天井の梁に入ったひび。(写真提供:河江肖剰)
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 ただ、個人的にはその可能性は低いと思う。天井のひびが入ったところにモルタルが塗られ、ひび割れ具合を確認した跡が残っているが、そこからさらに割れ目が広がった痕跡はない。王の間はそのまま使われたと考えるのが自然だろう。

重量拡散のための空間か?

 当時、ピラミッド内部に空間を作ることは挑戦的な試みだった。入り口の上部に見られる「切妻構造」や、大回廊と同じような「持送り式構造」は、建築的には、いずれも重量を分散する目的のために作られている。

 スネフェル王が造らせたメイドゥムのピラミッドには、玄室に繋がる水平通路の上に、持送り式の空間が作られている。それは水平通路の安全性を確保するために作られたと考えられる。

メイドゥムのピラミッド内部の水平通路。天井が平らに作られている。(写真提供:河江肖剰)
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 今回発見された空間も、大回廊の真上に位置し、大きさも同じくらいあることから、大回廊にかかる重量を軽減させる目的があったのかもしれない。しかし、大回廊自体がすでに持送り構造で作られていることと、位置がかなり上にあるため、この考え方にはすでに疑問が呈されている。しかし、王の間の天井のひびを受けて新たに設けた重量拡散の空間と考えることもできる。

 気になるのは、王の間の上にある「重量拡散の間」との位置関係だ。王の間の上にある、やぐらのような形の「重量拡散の間」は、そこで拡散した重量が大回廊にあたらないように、高さを設けて建造されたと考えられている。だが、今回発見された空間は、「重量拡散の間」で拡散した重量があたる位置に存在しているようにも見える。やはり、もっと正確な位置の解析が求められる。

「単一計画説」vs「計画変更説」

 この連載の「第14回 ピラミッドに新たな「未知の空間」の発見[前編]」でも紹介したように、スキャン・ピラミッド計画チームは2016年に、正規の入り口の裏に、通路と思われる空間を発見している。それは幅1~2メートル、高さ1~3メートルの空間である。それが水平か、傾斜しているのか、どこまで続いているのかはわからない。だが位置的には、新しく発見された空間とつながっている可能性も考えられる。

 もしそうだとすると、今回見つかった空間は、かなり初期の段階から計画的に作ろうとしていたものであり、ピラミッド内部の空間も、最初からその形を意図していた可能性がある(もしそうであれば、上述した、ひびを受けて新たに重量拡散の空間を設けたという説はなくなる)。

 大ピラミッドはかなり複雑な内部構造を持つが、それに関して、大きく2つの説がある。「単一の計画」の下ですべて建てられたという説と、「計画は変更」されながら現在の形になったという説である。それぞれの説には、さまざまな根拠が示されていたが、今回の発見によって、これらの仮説や根拠をもう一度見直さなければならなくなったともいえる。

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