第5回 3Dモデル生成、舞台裏の奮闘

 大ピラミッドは、世界で最も有名な古代建造物であるにも関わらず、実は石材の一つ一つを実測した図は存在しない。あるのは内部の部屋や通路の大きさを示す部分的な立面図や平面図、あるいは現存する201段ある各石材の高さだけを示す図である。

 さらにギザのピラミッドを含む第4王朝のピラミッド群は、建造技術が高く、崩れている場所がほとんどないため(後のピラミッドのように崩れていれば、内部構造の観察が可能である)、内部の石組み構造が判明していない。しかし、この「窪み」と「洞穴」は、石組み構造の手掛かりを与えてくれるかもしれない場所だったのである。

クフ王の大ピラミッド。赤い円が「窪み」の位置。(写真提供:河江肖剰)
クフ王の大ピラミッド。赤い円が「窪み」の位置。(写真提供:河江肖剰)
[画像のクリックで拡大表示]

 これらの場所は、もともとフランスの建築家であるジャン=ピエール・ウーダン氏が、彼が唱える「内部螺旋(らせん)傾斜路」説を裏づけるものだと主張して有名になった場所だった。彼によれば、230万個と言われている石材を運び上げるためには、従来考えられてきたように外側に傾斜路を設けたのではなく、ピラミッドの内部に螺旋状の傾斜路が造られたのだという。そして、その一部が「窪み」と「洞穴」だというのである。

 しかし実際、撮影クルーとともに、私が登ってみて観察したところ、ウーダン氏が主張するような証拠は何も見当たらなかった。しかし同時に、興味深いことに、これまで考えられていたように、大ピラミッドの石材はすべて完璧に整ったものではなく、「洞穴」の石材は不ぞろいで、整然と東西南北に向いてすらいなかった。この場所をさらに理解するためには、実測図が必要だったが、今回の登頂は考古学調査のためではなく、あくまでテレビ撮影のためであったため、その場所を細かく記録する時間も機材もなかった。

3Dチームの闘い

 日本に戻ると、3Dチーム・メンバーである関西大学の安室喜弘先生と、大阪大学の金谷一朗先生に相談をしてみることにした。彼らは考古学者ではなく、コンピューター・サイエンティストである。当時、安室先生と金谷先生とは、ギザの第4のピラミッドと言われていたケントカウエス女王墓の3Dデータを用いた共同研究を行っていた。事情を話すと、Structure From Motion(以下SFM)という技術を使えば、撮影した映像から3Dデータを生成することは可能かもしれないという。もしそれができれば、今度はそこから立面図や平面図をおこすことができる。