第5回 3Dモデル生成、舞台裏の奮闘
ナショナル ジオグラフィック日本版2015年12月号に、現在私が行っている大ピラミッドの3D調査が紹介された。エジプト滞在中、考古学の研究とともに、半ば趣味で写真を撮っていた私にとって、ナショジオは憧れの雑誌であり、そこに載るというのは一つ大きな目標だった。
今回、日本版というローカルなものではあるが、ここに自分の研究が取り上げられたのは感慨深い。しかし、これは私一人の力ではなく、本誌でも説明しているように、総合科学としての考古学プロジェクトで働く、チームの全員の力である。
そこで、今回のWebナショジオでは現場の話ではなく、現場から得たデータを解析すべく、舞台裏で活躍している3Dチームについて紹介したいと思う。そこには表舞台以上のドラマや葛藤があり、その奮闘の中から生まれたデータが誌面を飾っている。
最初に、本誌にも記載した、今シーズン最大の成果物である大ピラミッドの「窪み」と「洞穴」の3Dデータを、Webならではの方法である映像でお見せしよう。これが大ピラミッドの内部の石組み構造を知る手掛かりとなったものである。そして、以下に、そのデータができ上がるまでのこの2年間の闘いについて述べていこう。
ピラミッドに登る
2013年3月、TBSの番組「世界ふしぎ発見!」の撮影に同行した私は、特別な許可のもと大ピラミッドに登った(普段、登ることは禁じられている)。考古学者がピラミッドに登るのは、そこにピラミッドがあるからではない。学術的な目的があるから登るのである。私の目的は、北東の角80メートル地点にある、石材が剥がれ落ちてできた「窪み」のような場所と、その奥にある「洞穴」のような空間を観察し、ピラミッドの石組み構造について新たな知見を得ることだった。