私はこのチームの一員になったことを心から誇りに思っていたが、大学では歴史学たるエジプト学しか学んでいなかったために、恥ずかしながら、発掘方法についてはほとんどなにも知らなかった。そのためレーナー隊に入った後、知らないということを包み隠さず、分からないことがあれば、貪欲にあらゆることをメンバー一人一人に尋ねようと決め、ことあるたびに、質問を浴びせかけた。

 しかし、ありがたいことに、そういったことを嫌がるメンバーはここには誰もいなかった。ベテランのメンバーである古植物学者のマリアンに色々なことを質問した後、「なんでもかんでも聞きすぎて、すいません…」と謝ったときには、「気にしないで。ユキ、あなたはパッションで有名だから」と笑われた。そのときには、ほっとすると同時に、レーナー博士の話を思い出し、少し嬉しくなったものである。

なぜ古代について知りたいのか

 ピラミッド・タウンの発掘は1月に始まる。

 エジプトの冬は、実は、とても寒い。砂漠であればなおさらだ。その時期には、朝、太陽が出るのがいつも待ち遠しく感じられた。コンクリートのように堅くなった地面をかじかみながらピッケルやこてで掘り進む作業をしていると、あっという間に手にひび割れが生じる。横で働いているイギリス人考古学者を見ると、30代だというのに彼の手はひび割れ硬くなり年寄りの手のように見えた。

 2月、3月はハムシーン(砂嵐)の季節だ。不安定な気候が続き、砂嵐が吹き荒れたり、雨が降ったりするなか、測量し、遺構の地図を作る。4Hの硬い芯が入ったステッドラーのシャープペンシルでも砂混じりの雨に降られると、描いていくそばから線がにじみ、かすれていった。1日が終わり、家に帰って服を脱ぐと、体中から砂が床に溜まるほどこぼれ落ちた。

自分の現場で製図する筆者。(Courtesy of Ancient Egypt Research Associates, Inc.)
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 春が終わり、初夏になると暑さが急激に増していく。それに比例するように、参加メンバーたちはそれぞれの国に帰り始めた。私はエジプトに住んでいたということもあり、最後まで残っていた一人だった。

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