第3回 情熱あふれる発掘のプロたち
世界中で、1カ所、発掘現場を選ぶとすれば、迷うことなくギザのピラミッドを選ぶ。その場所にいま自分がいる――レーナー隊に入り、ピラミッド・タウンの発掘を始めたとき、最もいたい場所で、したいことをしているという高揚感は、これまで覚えたことがないものだった。
夜明け前に起きて朝食を食べ、住んでいたカイロ市内のアパートから、ギザのディグ・ハウス(Dig House=宿舎兼研究室兼アーカイブ保存所)へ向かう。早朝のミーティングに参加し、その日のチーム全体の動きや注意点を聞いた後、他のメンバーたちとともに機材を持って、トヨタの古いハイエースに乗り込み、ぎゅうぎゅう詰めになりながら現場へと出発する。
ギザの現場はいつも清涼としていた。凛とした冷たい空気。民族衣装を着たエジプト人の人足たちの歌声(彼らは威勢をつけるときに皆で歌う)。つるはしで地面を削る音。日の出前の透き通るような青から、徐々に赤みを帯びてくる空。朝日に照らされ、燃え立つように赤く染まるピラミッド。掘り返されたばかりの足下の遺跡。ここにいるだけで幸福感が強く、静かに湧いてきた。
レーナー隊には、実に20カ国以上の様々な国籍の人たちが参加していた。彼らの多くは、発掘や製図や写真を生業とする専門家で、エジプトだけでなく世界中の現場を渡り歩き、プロジェクトごとに雇用契約を交わす、言わば考古学におけるプロの傭兵のような人々だった。
彼らはミッションからミッションへ、季節ごとに、世界中を渡り歩く。例えば、1月から4月まではエジプト、5月から7月まではイギリス、8月から9月はトルコ、10月から12月はバーレーンと。