第13回 語呂合わせで生まれたエジプトの神々

 現在までサッカラでは、ウナス王を含め、6人の王と4人の王妃の墓から同様のテキストが発見されている。便宜的に759の独立した章に分けられているが、叙述的な神話というより呪文の寄せ集めのようである。数語もしくは数百語からなる長短様々な節が不規則に散在しており、ジグソーパズルに例えるのであれば、ピース同士はきっちりはまっているにも関わらず、上下左右の関係がまるで意味をなさない混沌とした絵のようになっている。

 現在、学者たちはこの絵の中になんとか規則性を見出そうと、主に次の5つに分類することが可能ではないかと提案している。

 1つめは「演劇のテキスト」であり、儀礼上の式辞と所作に関するものである。2つめは「賛歌」であり、それは「演劇テキスト」を補足するものとして関連付けられていた。3つめは韻文として構成された「連禱」であり、神聖なものの名前を列挙し唱えられる。4つめは「アク〈祝福された霊〉にする」ための呪文である。そして最後は、蛇や危険な存在から身を守るための「守護」の呪文である。

 創世や神々の誕生についての描写は、これら5つの分類された呪文の中に、隠されるように、断片的に散りばめられている。この理由は現在でも分かっていない。

ツタンカーメン王墓から出土のホルス神像。(写真提供:河江肖剰)
ツタンカーメン王墓から出土のホルス神像。(写真提供:河江肖剰)
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 古代エジプトの言葉は約500の基礎的な文字からなっており、それは一般的にヒエログリフとして知られている。ヒエログリフとは、以前にも書いたようにヒエロス〈聖なる〉とグリフォ〈彫る〉という二つのギリシャ語から来ている。古代エジプト人自身はメドゥ・ネチェル〈神の言葉〉と呼んだ。

 現在、1億3000万点以上ともいわれる膨大な本や日々氾濫する文字や情報に囲まれたわたしたちには容易に想像が付かないが、4500年前当時、文字は希少で貴重、そして、実際に物理的な力を持つと考えられていた。そこで、神々の誕生や創世の神話についてあからさまに記述するのは、もしかすると一種のタブーだったのかもしれない。いずれにせよ、そこに刻まれた断片的な内容を解釈すると、世界の始まりは次のようなものだった。