第13回 語呂合わせで生まれたエジプトの神々

ウナス王のピラミッド。(写真提供:河江肖剰)
ウナス王のピラミッド。(写真提供:河江肖剰)
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 後の新王国時代(紀元前1539~1077年頃)の歴代のファラオが眠る「王家の谷」の王墓には、「冥界の書」、「門の書」、「洞窟の書」など、宗教碑文とレリーフが壁や天井を覆っている。しかし、ギザの三大ピラミッドを含め、古王国時代(紀元前2543~2120年頃)初期のピラミッド内部は、まったく飾り気のない石材の表面で、ピラミッドが当時の宗教や死生観について語ることはなかった。

 その沈黙を守っていたピラミッドが、この発見によって突如として語り出したわけである。そして、その内容は、なんと世界の誕生についてだった。当時のエジプト学者たちの驚きは、想像に難くない。言い換えれば、エジプトのみならず人類史のなかでも最古級の宗教碑文は、ピラミッド内部に書かれてあったのである。

 ウナス王のピラミッドの上部構造である四角錐は、風化して砂の山と化している。対照的に、地下構造の保存状態は極めて良い。

 北面に設けられた入り口から薄暗い地下へ屈んで降りていくと、整然とした長い通路の左右の壁にヒエログリフが縦書きで刻まれている。通路の突き当たりには、3.75メートル×3.08メートルの広さの前室があり、壁一面にびっしりとヒエログリフが刻まれている。

 前室の西には、王が埋葬された部屋である玄室が位置している。7.03メートル×3.08メートルの広さがある玄室の壁は光沢ある乳白色のトラバーチンという大理石の一種で内張され、そこにも隙間なくヒエログリフが刻まれ、さらには聖なる葦の小屋を示す葦の簾(すだれ)や木枠の周壁が彫刻と彩色されている。切妻天井は夜空を示す青地に星々が規則的に彩られており、その下にウナス王の黒い玄武岩の石棺が横たわっている。

ウナス王のピラミッドの壁に刻まれた「ピラミッド・テキスト」。(写真提供:河江肖剰)
ウナス王のピラミッドの壁に刻まれた「ピラミッド・テキスト」。(写真提供:河江肖剰)
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