第11回 エクスプローラーたちの祭典

エクスプローラー・シンポジウム 2016

 シンポジウムには、私たち13人以外にも、世界中から70人近くのエクスプローラーたちが集まった。前回も書いたように、この協会における「エクスプローラー」とは一種の称号で、協会の研究員から助成金をもらっている人まで様々だ。

 みな一癖も二癖もありそうな連中だったが、同時に、コミュニケーション能力にも優れた人たちで、話しかければ、誰もが気さくに、熱く、そして端的に(ここがけっこう重要である)、自分のプロジェクトについて語ることができた。

 グロブナー・オーディトリアムは、エクスプローラーたちと、ナショジオのスタッフ、そして富豪たちでいっぱいになった。

 協会の会長であるゲーリー・ネル氏がステージに立ち、「私たちは、あなたたちエクスプローラーのために、ここにいるのだ!」という力強い言葉によって、シンポジウムは開会された。

 シンポジウムはいくつかのテーマに分かれていた。“An Evening of Exploration and Discovery”(探検と発見の夜)、“Conservation at a Crossroads”(岐路にたつ保全活動)、“Into the Underworld”(地下世界へ)。

 私のプレゼンは、“High Tech History”(ハイテクを用いた歴史研究)に分類され、「宇宙からの考古学」を提唱し、100万ドルのTEDプライズを受賞したサラ・パーカック博士や、古代遺跡の保存と記録を推進している世界的な機関であるCyArkのロス・デビソンと話すことになった。

シンポジウムで語る著者。(写真提供:Arthur Huang)
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 私が語ったのは、大ピラミッド登頂についてだった。建造の謎を解くために、ピラミッドに登り、そこで得た映像/画像データを用いて、3D化して組積造の手がかりを得るという話をした。

 シンポジウムは、緊張もあったが、とにかく楽しかった。登壇者全員が、自分の研究を熱く、嬉々として、あるいはシリアスに(密猟や自然保護についてなど)語った。そこには「Exploration(探検、探索)によって、世界を変えたい」という信念がみなぎっていた。

 聴衆は、頷き、笑い、ときに涙ぐみ、最前線に立つエクスプローラーたちの言葉に耳を傾け、大きな拍手によって、その活動を賞賛した。

 たぶん、どのような分野でも、長く続けていると、様々なしがらみが鎖のように体に巻き付いてくる。最初は重く感じるが、多くの人が、そのうち、その鎖の重さや輝きを自慢し始める(これは米国の詩人リロイ・ジョーンズの言葉である)。

 そういった鎖を感じながらも、自分にとって、あるいは世界にとって大事なことが何なのかを見失うことなく追い続け、活動している仲間たちがここには集まっていた。そして、シンポジウムは、そういった普段のしがらみを落とし、自らの根幹に触れるための祭りだった。

 1週間という短い期間ではあったが、私もこのシンポジウムに参加することで、なぜ自分がエジプト考古学やピラミッドに惹かれ、研究しているのかを、改めて見つめ直すことができた。それは、自分の源に帰ることができた特別な経験でもあった。

入り口前での集合写真。(写真提供:アナスタシア・クローニン)
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つづく

河江 肖剰(かわえ ゆきのり)

1972年、兵庫県生まれ。1992年から2008年までカイロ在住。エジプトのカイロ・アメリカン大学エジプト学科卒業。2012年、名古屋大学で歴史学の博士号を取得。現在、名古屋大学大学院 文学研究科附属 人類文化遺産テクスト学研究センター共同研究員。米国古代エジプト調査協会(Ancient Egypt Research Associates, Inc.)調査メンバー。ピラミッド研究の第一人者マーク・レーナー博士のチームに加わり、ギザでの発掘調査に10年以上にわたって従事。人文科学と自然科学の融合を目指した新しいアプローチによって、ピラミッドの構造を調査する、産学共同プロジェクトGiza 3D Surveyを推進中。米ナショナル ジオグラフィック協会が支援する、2016年エマージング・エクスプローラー。著書に『ピラミッド・タウンを発掘する』(新潮社)『河江肖剰の最新ピラミッド入門』(日経ナショナル ジオグラフィック社)がある。趣味は古武道、CQC(近接格闘術)、ブラジリアン柔術。