第11回 エクスプローラーたちの祭典

物語の力

 今年新たに選ばれた、私たち13人のエマージング・エクスプローラーは、「エクスプローラー・シンポジウム」の始まる3日前に、このナショジオ本部に集結した。

 メンバーは世界中から来ていた。七大陸の最高峰をバングラデシュ人で初めて制した女性。ハーバード大学で微生物の研究をし、火山、海底、火星まで探索する地球生物学者。廃棄物からあらゆるもの(服、家具、飛行機)を作る台湾の天才。コンゴで密猟者と戦う野生生物犯罪の調査員。近年の人類学における最大の発見のひとつ、新種のヒト属ホモ・ナレディの発掘メンバーなど、みなが多彩で情熱と才能に溢れた連中だった。

2016年度エマージング・エクスプローラー。(PHOTOGRAPH BY Rebecca Hale/National Geographic Partners)
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「ナショナル ジオグラフィックへようこそ! 皆さんをファミリーの一員として、心から歓迎します!」ナショジオ本部での1週間は、まずエクスプローラー・プログラムの統括責任者であるアレキサンダー・モーエン氏の挨拶から始まった。

 続いて、コミュニケーション・トレーニング・インストラクターのトム・バレット氏が、どのようなプレゼンが好ましいかというレクチャーをした。このエクスプローラー・シンポジウムのメイン・イベントのひとつは、私たち13人のプレゼンだった。持ち時間は一人12分。TEDのようにステージに立ち、聴衆に語りかけるスタイルだ。

 トムは、最初の「つかみ」が重要で、そこで一気に聴衆を惹き付けること。その後、パーソナル・ストーリーを織り交ぜ、共感を促すこと。それぞれのスライドには見出しとなるような語りから始めること。ところどころに小話を挟むことなど、プレゼンテーションの仕方を教えてくれた。

 しかし正直、プレゼン方法を知らない学生に対する授業のように感じてしまい、私は鼻で笑ってしまった。いままで、TED含め、数え切れないほど講演してきたため、いまさら聞くような話ではないと思った。

 トムの話が終わった後、実際に、自分たちが用意してきたスライドで話をしてみることになった。選ばれたのは、七大陸の最高峰を制した登山家のワスフィアと、ハーバードで微生物研究をしているジェフだった。

グロブナー・オーディトリアムで話すジェフ。(写真提供:河江肖剰)
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 彼らのプレゼンは素晴らしかった。内容はもとより、ストーリー性や、その完成度の高さに唸ってしまった。

 しかしプレゼン終了後、そこにいるメンバーたちから「最初の映像が強烈なので、まくし立てるように話すのではなく、一呼吸置くことで、強い印象を聴衆に与えることができると思う」とか、「パーソナル・ストーリーが強すぎて、その直前の話が吹き飛んでしまうので、あえて、そこで用いる言葉を柔らかくするか、あるいは1分以内にすべきだ」など、次々にアドバイスが飛んだ。

 私はそれを聞いて唖然とし、同時に、自分の思い上がりを恥じた。

 ナショジオにいる間、耳にたこができるほど聞いたのは、「物語の力」だった。あなたたちは皆、それぞれの現場で活躍している。だが、足りないのは、それを世界にもっとシェアする、あるいは伝えるということである。そのために、ナショジオという媒介があるのだとスタッフたちは折に触れて強調した。