第11回 エクスプローラーたちの祭典
質実剛健のナショジオ本部
世界最大の非営利学術研究団体である「ナショナル ジオグラフィック協会」本部は、ワシントンのホワイトハウスから、徒歩で10分かからない距離にある。
ガイドブック『地球の歩き方』には、この組織の力を示す話として、「ワシントンは特別行政区なので地域産業はないと思われているが、ひとつだけある。それはナショナル ジオグラフィックだ!」という冗談のような逸話が載っている。
この協会で、一年に一度開催される特別な内輪の祭り「エクスプローラーズ・ウィーク」に参加するため、6月、私は初めてここを訪れた。
それまでの勝手なイメージでは、ナショジオ本部は、少なくとも東京国立博物館の本館のような重厚な門構えで、中に入ると壮麗な中央ホールがあったりするのかと思っていた。しかし到着してみると、期待に反して、建物は簡素で、エントランスもこぢんまりとしており、最初はどこが正面玄関かも分からなかった(それでも全体で14,000平方メートルほどの敷地がある)。
ナショジオ本部の建物は大きく3つに分かれている。まず、最初の本部として1902年に建てられた「ハバード・ホール」のある歴史的な建物。ここは小規模だが格調高く、伝統が感じられる作りになっており、現在、後援者との特別なミーティングなどで使われているらしい。
その建物を拡張するようにして建てられたのが、レクチャーが行われたり、ドキュメンタリー映画が上映されたりする「グロブナー・オーディトリアム」がある第2の建物である。エクスプローラーズ・ウィーク中のシンポジウムでは、主にこの建物の中で様々なイベントやミーティングが行われた。
最後に、それらの建物と、中庭を挟んで建っているのが現在の本部ビルである。ここは1階が博物館になっているが、入り口も狭く、入るとすぐにエレベーターがあったりと、作りがどことなく古めかしい感じがする建物である。
これらビルは地上では異なる3つの建物になっているが、実は地下では全て繋がっており、さながら秘密基地のようになっているらしい。いずれも、派手な外見ではなく、質素な作りである。
カフェテリアも一カ所しかなく、食事の内容も、バランスよく食べることはできたが、取り立てて素晴らしいということもなかった。以前、訪れたことがある、和洋中印なんでもありのシリコンバレーのGoogle本社の社員食堂(食堂というより、巨大なフードコートだったが)などとは大違いだった。
だが、考えてみれば、当たり前だろう。ここで働いているのは、世界中の様々な現場の最前線に立つエクスプローラーをサポートする人たちだ。派手な見た目や、無駄にお金がかかる設備などは好まれなくて当然である。