第1回 ピラミッドの発掘調査への長い道のり

 あれは中学2年生か3年生の頃だった。

 日曜日の夜にサッカーの練習から帰ってくると、リビングのテレビがついており、エジプトのピラミッドの前で、2人のフランス人が何かを熱心に話す姿が映っていた。

 彼らは、「北面に位置する大ピラミッドの入口が中心になく、東側に7.2メートルほどずれているのは、とても奇妙なことだ」、「内部の通路や部屋も大ピラミッドの中心軸の線上ではなく、すべて東側に位置しているが、それは左右対称を伝統とする古代エジプトの建築と合わない」、「そのため、もしかすると西側には、これまで発見されていない未知の空間があるのではないか」……そんなことを熱く語っていた。

 座ることも忘れて、立ったままそのテレビ番組を見ていたと思う。

 この2人、ジャン=パトリス・ゴワダンとジル・ドルミオンというフランスの建築家は、その後、「オペラシオン・ケオプス」(「ケオプス作戦」の意。ケオプスとは大ピラミッドを造ったクフ王のギリシア名)というプロジェクトを立ち上げ、エジプト政府から許可を得て、精密重力計を使ったピラミッドの密度調査を行った。調査の結果、ピラミッド内部の「水平通路」の西側に密度の異常が見つかった。

 そこで2人は、水平通路の壁にドリルで穴を開け、もしその奥に未知の空間があれば、ファイバースコープで内部を撮影しようと考えた。しかし実際に穴を開けてみると、予想だにしないことが起きた。穴から砂があふれ出てきたのである。

水平通路の西の壁。現在、ドリルで開けられた穴には大きな鉄製のボルトのようなものが差し込まれている。(写真提供:河江肖剰)
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 なぜ砂が出てきたのかはわからなかったが、ピラミッドは石材を積み重ねただけの建造物でないことはわかった。しかし、遺跡に穴を開けて調査するという行為に世界中から非難が殺到し、彼らのプロジェクトは中止に追い込まれた……

 このテレビ番組が、私がエジプトに興味を持ったきっかけだった。そして、このWebナショジオの連載で追々書いていくが、不思議な縁から、四半世紀を過ぎたいま、この未知の空間と関わるピラミッド研究に取り組み始めている。

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