第15回 ピラミッドに新たな「未知の空間」の発見[後編]

「ファラオの呪い」

 このスキャン・ピラミッド計画で重要なのは、ミューオンラジオグラフィという最先端技術をピラミッド研究に導入したという調査方法もさることながら、メディアとのコラボレーションの仕方だろう。

カイロ博物館所蔵のネフェルティティの頭部像。(写真提供:河江肖剰)
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 最初にNHKスペシャルが放送されたとき、一部視聴者から「結局、まだ何も発見していないではないか」という声も聞こえたが、NHKは科学の作法に則り、まず研究課題を紹介し、次に新しく導入したミューオンラジオグラフィという方法の信頼性を示した。その上で、次の番組の中では、中間報告となる未知の存在の可能性を示したのだ。こういった着実に土台をかためるような報道をおろそかにして、いきなり財宝やミイラの話になると、とたんに宝探しの様相を呈し、胡散臭くなるだけではなく、報道が過熱し、様々な問題が巻き起こる。

 そういった状態を、現場の私たちは冗談半分に「ファラオの呪い」と呼んでいる。まさにツタンカーメン王墓を発見したカーターがこうむったことであり、近年であれば、ネフェルティティ王妃の墓のありかを巡ってニコラス・リーブス博士が巻き込まれた出来事だろう。実際、これは考古学に限らない。大きなプロジェクトであればあるほど、メディアとのコラボレーションは科学にとって常に重要な課題である。

2つの通路

 スキャン・ピラミッド計画は、順繰りに行けば、今後は考古学者たちによる解釈や議論が始まるだろう。しかし現在のところ、正式な報告書が刊行されていないということもあり、マーク・レーナー博士を含め、ピラミッドの専門家たちはまだ慎重な姿勢を崩していない。

 ミューオンラジオグラフィで検出された偏差について、私自身も最初は、単に充填材のかたまりが検出されたのではないかと考えたが、森島博士は検出された差異と解析から考えると、1〜2メートルほどの空間、それもピラミッドの中心にむかって伸びる通路と見なすべきではないかと述べている。ただ、その通路が上向きなのか、下向きなのか、あるいはまっすぐなのかは、現時点では分からないという。

 この通路はいったいどこに繋がっているのだろう?これまで考えられてきた、まだ発見されていない「本当の玄室」に繋がっているのだろうか?

 私は、この通路はゴワダンとドルミオンの言うように大回廊に繋がっているのではないかと思う。しかし、そこから別の空間に繋がっていることはないだろう。上述したように、玄室の北側にはなにもないことは既に早稲田大学の調査によって明らかになっているからだ。

 重要なのは、この時代のピラミッドには2つの入り口と通路があり、それが内部で1つになり、玄室に繋がるということではないだろうか。

 あまり注目されていないが、ギザの三大ピラミッドのうち、カフラー王とメンカウラー王のピラミッドには、上と下に設けられた2つの入り口と通路がある。

 入り口と通路が2つあることについて、これまでの主な仮説は、ピラミッドの位置や大きさが建造途中で変更されたためにつくり直されたのではないかというものだ。

 今年2月にTBSの「世界ふしぎ発見!」のロケに同行したとき、普段は入ることのできない、カフラー王とメンカウラー王それぞれのピラミッドの「上の通路」に入ることができた。