第15回 ピラミッドに新たな「未知の空間」の発見[後編]

ゴワダンとドルミオンの仮説

 ゴワダンとドルミオンはこういった一連の変則性を説明しうる1つの仮説を立てた。それは、大ピラミッドには未知の空間がまだあり、そのために、これらの空間や溝が必要だったのだという説だ。

 彼らによれば、現在は石材によって塞がれているため見えなくなっているが、入り口付近の切妻構造のすぐ下には「通路が存在している」という。そしてその通路は、大ピラミッドの中心部の大回廊に繋がっているのだという。

切妻構造と現在発見されている下降通路の入り口。ドローンで撮影。(映像提供:TBS/テレビマンユニオン「世界ふしぎ発見!」)
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 ゴワダンとドルミオンは、「大回廊は二重構造の通路になっていた」と推論している。側面の溝は、大回廊を上下2つに分けるための板を張っていた跡であり、基礎部に等間隔に開けられた穴は、その板を支えるための支柱だというのだ。そしてその上の通路は、いまだ発見されていない「未知の空間」──おそらく本当のクフ王の埋葬室──に続いており、その位置は玄室のすぐ北側だと考えた。

 やぐらのような重量拡散の間が玄室の上につくられた理由は、もし玄室の真上に切妻構造をつくると、この未知の空間に分散された重量がかかって潰れてしまうためだろうと推測している。

 彼らはこの仮説を証明するために、ピラミッド内外を精密重力計で計り、水平通路では西側に向かってドリルで穴を開け、空間の存在を確かめようとした。しかし、そこから出てきたのは砂だけで、しかも遺跡に穴を開けるという手法が大きな問題となったため、計画は頓挫した。さらに、その後を継いだ早稲田大学による電磁波探査が行われたが、玄室の北側の側面には偏差は見られず、空間の存在はほぼあり得ないという結果が出たため、彼らの一連の仮説は忘れ去られていった。

スキャン・ピラミッド計画

 ところが、この仮説が四半世紀以上たったいま再度注目されてきている。

 きっかけは、ピラミッドを最新技術で調査するスキャン・ピラミッド計画(Scan Pyramids Mission)である。

 この調査は、フランス、エジプト、日本、カナダによる国際調査プロジェクトで、宇宙線ミューオンによる内部の透視、ドローンによる形状計測、サーモグラフィーによる表面温度の偏差などを調べることで、未知の空間の存在を調べるものだ。

 この中で特に注目すべきは、森島邦博博士率いる名古屋大学理学研究科チームによる最先端技術ミューオンラジオグラフィだろう。ミューオンラジオグラフィとは、宇宙線ミューオンを検出することで、X線と同じように、非破壊で物質内部を可視化する技術である。X線は分厚い鉄や岩盤を透過することができないが、宇宙から降り注ぐ素粒子ミューオンは透過力が非常に高いため、原子炉や火山などの分厚い対象物の内部を可視化することができる。

原子核乾板を持つ森島邦博博士。(写真提供:河江肖剰)
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 このプロジェクトについて、日本では、2016年5月のNHKスペシャル「古代遺跡透視 プロローグ 大ピラミッド 永遠の謎に挑む」で取り上げられた。番組では、ミューオンラジオグラフィという新しい調査方法が、巨石建造物に用いることができるのかどうかを実証する試みが放送された。

 そこではクフ王の父親であるスネフェルが建造した屈折ピラミッド内部で、すでに確認されている部屋をミューオンラジオグラフィで検出できるかどうかの実験が行われ、結果、見事、部屋の存在を検出することができた。

屈折ピラミッド。スネフェル王が建造した。(写真提供:河江肖剰)
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 続く10月のNHKクローズアップ現代+「ピラミッド透視 謎の空間を発見!」では、大ピラミッドの下降通路の一部に設置した原子核乾板(ミューオンを記録する特殊な写真フィルム)から、ある場所に偏差が見られたことが放送された。その場所こそが、入り口の切妻構造の裏である。