第7回 エジプト革命と発掘隊の危機管理

 毎年、この時期になるとエジプト革命を思い出す。

 2011年の1月から2月にかけて、私は仲間とともに、ギザの「ピラミッド・タウン」で発掘を行っていた。その当時を思い返すと、まず浮かんでくるのは天候のことだ。ピラミッドには非常に珍しく雨が降り、これまで見たこともないような雲が天空に流れ、季節外れの砂嵐が起こった。奇妙で不安定な空を見ていると、国中の人々の不安を表しているようだと感ぜずにはいられなかった。

2011年1月17日、タクシーの車内から撮影した雨のギザのピラミッド。(写真提供:河江肖剰)
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 私たちは、気がつけばあっという間に革命の混乱に巻き込まれていた。遺跡は閉鎖され、これまでパレードのときにしか見たことがなかった戦車や装甲車が至るところに配置された。携帯電話は遮断され、交通機関は麻痺し、新鮮な食料の確保も難しくなった。泊まっていたアパートの下で銃撃戦が起こったこともあった。危険や緊張感はあったが、国がより良い方に、民主的なものに変わるかもしれないという期待や高揚感がそれを上回っていたように思う。

 あれから5年が経った。しかし、世界は、当時思い描いていたものとはまったく違う様相を見せている。いまは、どこでなにが起きてもおかしくない状況になってしまった。

 そこで、今回は、革命の最初の数日間にどのようなことが起こり、私たち外国の発掘調査隊がどのように行動したのか、どんなことに注意していたのかを書いてみたいと思う。革命や暴動などには巻き込まれないのが一番だが、万が一の自衛のひとつとして、少しでも参考になれば幸いである。

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