第14回 ピラミッドに新たな「未知の空間」の発見[前編]

ダイナマイト調査と非破壊調査

 それでは数千年の盗掘を免れ、現代まで開けられていない部屋はあったのだろうか?

 実は、これまでにいくつか発見されている。

 1837年、英国の陸軍士官で探検家であったハワード・ヴァイズは、大ピラミッドの玄室の上に、高さの低い、不思議な空間を見つけている。現在、「重量拡散の間」として知られる5つの小部屋だ。一番下の部屋は、古代から出入りすることができたが、残る4つはヴァイズがダイナマイトで発破をかけて、入れるようにしたものだ(いったいどれほどの音と振動がピラミッドを揺るがしたのだろう・・・)。

 彼が見つけたそれらの空間には財宝などはなかったが、労働者のチーム名が書かれた「落書き」が見つかっており、そのやり方はともかく、考古学的には非常に重要な発見として知られている。

重量拡散の間に残された落書き。(写真提供:河江肖剰)
重量拡散の間に残された落書き。(写真提供:河江肖剰)
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 ピラミッド内部を「非破壊の方法」で最初に調べたのは、ノーベル物理学賞を受賞したルイ・アルバレである。彼は、X線によって人間の身体を透視するように、宇宙線によってピラミッド内部を透視できないかと考えた。そこで、1967~68年に、宇宙線の一種であるミューオンを検出する装置をカフラー王のピラミッド内部に数カ月間設置し、分析した。

 アルバレのチームは、カフラー王の父親であるクフ王のピラミッドや祖父であるスネフェル王のピラミッド内部には部屋が2つ以上あることから、カフラー王のピラミッドにも見つかっていない別の部屋があるのではないかと考えた。しかし、最終的には、ミューオンが検出できる範囲にはそういった部屋は見つからなかった。

カフラー王のピラミッド。(写真提供:河江肖剰)
カフラー王のピラミッド。(写真提供:河江肖剰)
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 そして、いまから約30年前の1986年に、2人のフランス人建築家によって、「未知の空間」探索において、最も重要な調査と発見が行われたのである。

つづく

河江 肖剰(かわえ ゆきのり)

1972年、兵庫県生まれ。1992年から2008年までカイロ在住。エジプトのカイロ・アメリカン大学エジプト学科卒業。2012年、名古屋大学で歴史学の博士号を取得。現在、名古屋大学大学院 文学研究科附属 人類文化遺産テクスト学研究センター共同研究員。米国古代エジプト調査協会(Ancient Egypt Research Associates, Inc.)調査メンバー。ピラミッド研究の第一人者マーク・レーナー博士のチームに加わり、ギザでの発掘調査に10年以上にわたって従事。人文科学と自然科学の融合を目指した新しいアプローチによって、ピラミッドの構造を調査する、産学共同プロジェクトGiza 3D Surveyを推進中。米ナショナル ジオグラフィック協会が支援する、2016年エマージング・エクスプローラー。著書に『ピラミッド・タウンを発掘する』(新潮社)『河江肖剰の最新ピラミッド入門』(日経ナショナル ジオグラフィック社)がある。趣味は古武道、CQC(近接格闘術)、ブラジリアン柔術。