第14回 ピラミッドに新たな「未知の空間」の発見[前編]
昨年からギザの大ピラミッドに「未知の空間」が存在しているのではないかというニュースが、世界的に報道されている。
報道されている場所は、ピラミッドの北面の入口上部に設けられた切妻の形をした巨大な石灰岩の裏と、北東の角105メートル付近の2カ所である(さらにまだある可能性も指摘されている)。
空間の存在を検出したのは、国際プロジェクト「スキャン・ピラミッド計画」の中核をなす名古屋大学理学研究科チームが用いた最先端技術「宇宙線ミューオンラジオグラフィ」と、フランスチームが用いた「ミューオン・テレスコープ」だ。どちらも宇宙線ミューオンを検出することで、X線と同じように、非破壊で物質内部を可視化する技術だ。
こういった発見に対して、多くのエジプト考古学者は慎重な姿勢を示している。空間の存在は否定していないが、それが一般に期待されているような秘密の部屋やミイラや財宝に繋がるとは考えていないからだ。
実はこれまでにも数多くの「科学的調査」が行われてきた。そのたびに未知の空間の存在が指摘され、時には穴が開けられて内部が調べられたが、結局なかには何もなかったり、単に充填材が埋まっているだけだったりということがあったためだ。
古代から中世にかけて記された「未知の空間」
大ピラミッド内部に何か秘密の空間があるといった記述は、古くは古代エジプト人が残している。
現在ベルリンのエジプト博物館に収蔵されている「ウエストカー・パピルス」は大ピラミッドが建造されてから800年ほど後に記されたものだが、そこには千一夜物語のように、父クフのために、息子の王子たちが次々に面白い物語を聞かせる話が載っている。