第6回 研究課題との縁

 人と人との出会いに縁があるように、おそらく研究者と研究課題との間にも縁がある。そして、それは往々にして、人知を超える不思議なものであり、たとえ何十年の時を経たとしても、縁があれば両者は引き寄せられる。

 私にとって、大ピラミッドの内部構造の研究は、まさにそういったものだった。連載の第1回に書いたように、古代エジプトに興味を持ったきっかけは、ピラミッド内部の空間を探すテレビ番組を10代の頃に見たことだったが、それから実に四半世紀以上経ってから、その謎に自分が挑むことになるとは想像だにしなかった。(参考記事:「第1回 ピラミッドの発掘調査への長い道のり」)

 もちろん、ピラミッドを造った労働者の町「ピラミッド・タウン」の発掘や他の遺跡の調査をしながらも、いつかピラミッド自体について研究することになるだろうとは思っていた。しかし、それを行うには、ほんとうに多くの出会いや経験や学びを得なければならなかったのだ。

 そして、歴史に「もし」はありえないが、一つでも条件が変わっていれば、この研究課題に挑むことはできなかった。それらは、テレビ番組「世界ふしぎ発見!」への予定外の出演であり、2011年のエジプト革命以前であれば絶対に下りなかったピラミッド登頂の許可が下りたということであり、番組の映像を特別に利用させてもらえたということであり、さらに、そもそも3D(3次元)計測調査を行う産学チームを編成していなければ、映像から3Dデータを生成しようというアイデアは浮かばなかっただろう。

大ピラミッドの洞穴で内部を観察する筆者。(映像提供:TBS/テレビマンユニオン(世界ふしぎ発見!))
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3次元から2次元へ

 前回書いたように、関西大学のチームは大ピラミッドの内部構造の手がかりを得るために、Structure From Motion(以下SFM)という技術を用い、「世界ふしぎ発見!」のクルーが撮影した映像から、「窪み」と「洞穴」の3Dデータを生成することに成功した。(参考記事:「第5回 3Dモデル生成、舞台裏の奮闘」)

 その3Dデータを考古学研究に使うためには、そこから2次元の平面図や立面図を生成する必要があった。しかし、3次元の世界を2次元に落とし込むのは、実は、容易なことではなかった。

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