第2回 知られざるモグラの不思議

「もうそれは、まさにモグラの性質そのもので、土の中にいてほとんど地上に出てくることがないっていう、とってもシャイな部分をもった、変わった生き物だからだと思います」とのこと。

 たしかに、モグラはその気で探せば、都市環境でも日常的に訪れる公園や、菜園などに、ごく普通にいる。いわゆる「モグラ塚」を作るので、緑地で小さく土が盛り上がっているところが点々とあれば、「ああ、いるな」、程度にはすぐに分かる。でも、そこからが難しい。「モグラ叩き」みたいに、一瞬でも、顔を出すことはないから、結局、言葉としては知っていて、存在は確認できても、どんな生き物なのかよく分からない。土の中にトンネルを掘って、ミミズとか虫とかを食べて生きているに違いないくらいの知識が、ぼくたちの平均的なものではないだろうか。

 とにかく謎が多いわけで、ざっくりこういうものだよ、という大づかみに理解をしたいとなるとどうなるのだろう。

「まず、分類からいきましょうか。モグラというのは、トガリネズミ形(かた)目というものの中に分類されています。一昔前は、食虫目とか呼ばれていたものです。その中にモグラ科というのがあって、さらにモグラ亜科とヒミズ亜科にわかれています。モグラ亜科の方が、モグラらしいモグラで、日本は結構なモグラ天国です。分布を見ると、コウベモグラ、アズマモグラがポピュラーで、中部地方を境に東西に分かれています。で、新潟県の越後平野にはエチゴモグラという、なぜかあそこにだけいるモグラがいて、佐渡島には、サドモグラというエチゴモグラにとっても近縁なやつがいる、というのが大きなところですね。あと、ミズラモグラという本州の山地にいる種類があります。さらに、尖閣諸島で、1標本だけみつかったセンカクモグラというのがいますが、ご存じの通り、今は調査も採集も難しい場所になってしまっています」

 日本のモグラは、コウべとアズマの二大派閥に加えて、新潟の2種と、山地のミズラ、1標本だけで知られるセンカクの6種。さらにヒミズ亜科の方は、ヒミズとヒメヒミズがいるので計8種ということになる。このあたりの分類は20世紀を通じて揺れてきており、川田さん自身、現在の体系を確定する際、大いに力を尽くした研究者の1人だ。

 では、モグラはどんな姿をしているのだろうか。土の中に隠れているので、姿形さえよく知らない人がほとんどのはずだ。

[画像のクリックで拡大表示]