第2回 知られざるモグラの不思議

国立科学博物館研究主幹の川田伸一郎さん。
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 国立科学博物館の研究主幹として哺乳類の標本の責任者の立場にある川田伸一郎さんは、モグラ博士として知られる。日本国内だけでなく、中国、台湾、ベトナム、タイなどのアジア諸国、さらにはアメリカやロシアなどでも、モグラのフィールドワークを行い、染色体研究を通じて、分類の解明に大きく寄与してきた。

 モグラは、誰もが知っているけれど、よくよく考えると謎に満ちた生き物だ。そこで、今回は、モグラ博士・川田さんに、知られざるモグラの姿を教えてもらおう。博物館の標本についての問いはおいておき、まずはそこからだ。

「講演なんかを頼まれると、まず3つ質問をすることにしています。『モグラを知ってますか』『モグラを見たことありますか』『生きてるモグラ、見たことありますか』です。で、1つ目の質問に『知りません』という人はまずいないんですよ。日本人は、だいたい言葉をしゃべるレベルの子どもでも、もうモグラは知っているんです。ところが、じゃあ見たことがあるかっていうと、ここがガクッと下がって、例えば全体の3割とかだったりして。それで生きてるの見たことあるかっていうと、だいたい東京なんかですと、全体の1割とかぐらい。場合によってはゼロのこともあります」

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 なるほど、と思う。ぼく自身は、死んだモグラを見たことはあるけれど、生きたものはないように思う。もちろん、動物園などで見るのは別だ。首都圏にいる人への情報としては、多摩動物公園の「モグラのいえ」は、アズマモグラとコウベモグラを簡単に見ることができるすごい展示だ。

「実は、野生の哺乳類の中で一番人間生活に身近なものの1つがモグラなんです。外から入ってきたドブネズミなんかは除くとして、あと、アブラコウモリっていうのが都会でもよく見られますから、モグラとアブラコウモリが、日本に住む人にとって身近な野生哺乳類の代表的なものだと思うんです」

 なお、日本にはモグラがたくさんいるけれど、北海道にはいない。なので、そこのところは注意。とにかく、神社や屋根裏や廃屋などに巣を作って都市環境でもあちこちに出没するアブラコウモリと並んで、身近な野生哺乳類の2トップだというのである。

 しかし、実際に見た人は、少ない。"Dead or Alive"(生死を問わず)でも3割、生きているものは1割というのは何故なのだろう。