第1回 「モグラ博士」にして「標本バカ」

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 国立科学博物館の川田伸一郎研究主幹(動物研究部脊椎動物研究グループ)は、モグラ博士として知られる。

モグラ博士のモグラの話』(岩波ジュニア新書)は読みやすいモグラ入門書だし、『モグラ──見えないものへの探究心』(東海大学出版会)は研究者の息遣いまで伝わると評判の「フィールドの生物学」シリーズの中の1冊だ。後者は本ウェブ連載「研究室に行ってみた。」とのシンクロ率は高く、これまでに登場していただいた、テングザルの松田一希さん、サバクトビバッタの前野浩太郎さん、クマムシの堀川大樹さんが、同シリーズに単著を持っている。こう書くと、松田さんがサルで、前野さんがバッタで、堀川さんがクマムシで、とすると川田さんはモグラのように響くが、研究者はしばしば、研究対象の名を冠して呼ばれる。

 さて「モグラの川田さん」のモグラ本も非常におもしろい。しかし、川田さんの「モグラ博士」の側面だけを見ていると、活動領域を見誤るかもしれない。川田さんは、自称「標本バカ」でもあって、「モグラ博士で標本バカ」をきちんとミックスしないとやっていることがよく分からないのである。

 つくば市にある国立科学博物館・筑波研究施設に、川田さんを訪ね、まずは「総合研究棟」にある地下1階の標本作製スペースを見せてもらった。大型動物にも対応できるウィンチや、大型冷蔵庫が完備されており、ちょうど、某所で座礁して死亡した小型鯨類が解体を待っているところだった。まさに自然史博物館の舞台裏、という雰囲気に満ちていた。

 そして、続いて、収蔵庫である「自然史標本棟」へ。

中央の建物が「自然史標本棟」。
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