――今、中東やアフリカは紛争が絶えず、過激派組織「イスラム国」(IS)の台頭などもあって問題となっていますが、野町さんがアフリカを取材していたころはどうだったのですか。

 一言でいえば、いたって自由でしたよ。
 1970年代から80年代のアフリカは、おおむねどの国も政情が安定していました。どこへ行くにも制約は少ないし、勝手にキャンプを張っても官憲が飛んでくるなどということはありませんでした。アフリカの国々が荒れ始めたのは、90年代以降ですね。

 アフリカの人々も、性格は国によって多様でしたが、人柄は穏やかでした。アルジェリアのオアシスで知り合った人の家に泊めてもらって、取材をしていたこともあります。

 チベットの場合は、政治的な背景があって80年代半ばまで、一般の旅行客はチベット自治区に入れませんでした。僕が最初に入った88年ごろは、さしたる規制もなく、自由に行動できましたね。

――辺境を取材するには、良い時代だったのですね。

 写真家として仕事をするにも、僕の時代は恵まれていたと思います。80年代後半から90年代半ばにかけては、日本は新雑誌の創刊ラッシュで、「DAYS JAPAN」や「マルコポーロ」「BART」といったビジュアル誌も出ていましたからね。創刊号にはお金をかけますから、取材費もわりと潤沢に使えました。行きたいところに行って、自由に取材ができたんです。

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野町和嘉 写真集『極限高地 チベット・アンデス・エチオピアに生きる』
標高4500メートルの高地で暮らす人々がいる。チベット、アンデス、エチオピアの3カ所は、人間にとって限界に近い高地だが、その地に暮らし、独自の文化を育んできた人々がいる。 一般的に高地は酸素が薄く、植生に乏しく、人が暮らすには向かない土地だ。だが、この3カ所は恵まれた自然条件や、長年かけて培った知恵によって、人々が暮らすことができた。しかも、低地にはない独自の文化を築き、奥深い伝統を保っている。高地の独自性に魅かれ、この3地域をめぐった写真家、野町和嘉が、極限の地の生活と雄大な自然を活写する。
出版社: 日経ナショナル ジオグラフィック社 価格:本体4600円+税 7月6日発売 ナショジオストア  アマゾン  

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