第4回 乾き、光が強く、荒涼たる大地へ

 一方、作品を発表する媒体はウェブが主流になってきて、雑誌などの紙媒体は減っています。ウェブに使う写真なら、少々クオリティが低くても通用しますし、場合によっては携帯やスマートフォンで撮った写真でもかまわないということだってありますからね。

 ドキュメンタリーに限らず、写真家を志すとしたら、まずこうした今の状況を認識しておく必要があると思います。さらに言えば、デジタル化したことで情報は一瞬にして世界を駆け巡り、国境という壁はなくなり、世界を舞台としたコンペに勝ち残らなくては食べていけない世の中になりました。幸い写真は、いとも簡単に国境を越えることのできる表現手段です。

 その場合に大切なのは、本気になって対象に向き合えるかということです。自分なりの視点、表現というものが写真に表されていなければ、作品は評価されません。それから国境を越えて共感を呼ぶことの出来る内容、視点、レベルの作品であることが条件であると思います。

 いつの時代も、世界は表現に飢えているし、本物は必ず通用する,というのが私の信条です。夢中になれる何かを掴むことさえ出来れば人々は振り向いてくれるはずだし、それを目指して写真と向き合いたいと、常に心がけているつもりです。

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(おわり)

野町和嘉 写真集『極限高地 チベット・アンデス・エチオピアに生きる』
標高4500メートルの高地で暮らす人々がいる。チベット、アンデス、エチオピアの3カ所は、人間にとって限界に近い高地だが、その地に暮らし、独自の文化を育んできた人々がいる。 一般的に高地は酸素が薄く、植生に乏しく、人が暮らすには向かない土地だ。だが、この3カ所は恵まれた自然条件や、長年かけて培った知恵によって、人々が暮らすことができた。しかも、低地にはない独自の文化を築き、奥深い伝統を保っている。高地の独自性に魅かれ、この3地域をめぐった写真家、野町和嘉が、極限の地の生活と雄大な自然を活写する。
出版社: 日経ナショナル ジオグラフィック社 価格:本体4600円+税 7月6日発売 ナショジオストア  アマゾン  

野町和嘉(のまち かずよし)

1946年高知県生まれ。1971年からフリーの写真家として活動を始め、写真集の出版や写真展開催など国際的な活躍を続ける、日本を代表する写真家の一人。1987年8月、ナショナル ジオグラフィック英語版の特集「サハラ砂漠の岩絵」に写真が掲載された。過酷な風土を生き抜く人々の営みと信仰をテーマに、サハラ砂漠を皮切りに世界各地で撮影を続けてきた。2015年7月に写真集『極限高地』を出版する。


高橋盛男(たかはし もりお)

1957年、新潟県生まれ。フリーランスライター。自動車専門誌の編集を手がけたのちフリーライターに。JR東日本新幹線車内誌「トランヴェール」、プレジデント社「プレジデント」「プレジデントファミリー」などに執筆。