第2回 人生をかけた巡礼者の祈り

――とんでもない奇習のように見えて、実はその土地に根差した理由があるのですね。

 その土地の風土や、そこで暮らす人々の精神性を、色濃く映し出すものが信仰だと僕は考えています。今では、世界的に生活様式やものの考え方が平準化しているなかで、大昔から変わらずに営まれてきた生活や、土着の信仰に根ざした風習に、改めて向き合う機会があっていいのではないかと思うのです。

――では、辺境の暮らしや信仰に深く関心を抱くようになった野町さんの写真家ルーツをうかがいましょう。

(つづく)

キリスト洗礼の祭り、ティムカットで、司祭が十字架を浸すのを合図に池に飛び込む信者たち。アクスム、エチオピア、2012年撮影。写真集『極限高地』より
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野町和嘉 写真集『極限高地 チベット・アンデス・エチオピアに生きる』
標高4500メートルの高地で暮らす人々がいる。チベット、アンデス、エチオピアの3カ所は、人間にとって限界に近い高地だが、その地に暮らし、独自の文化を育んできた人々がいる。 一般的に高地は酸素が薄く、植生に乏しく、人が暮らすには向かない土地だ。だが、この3カ所は恵まれた自然条件や、長年かけて培った知恵によって、人々が暮らすことができた。しかも、低地にはない独自の文化を築き、奥深い伝統を保っている。高地の独自性に魅かれ、この3地域をめぐった写真家、野町和嘉が、極限の地の生活と雄大な自然を活写する。
出版社: 日経ナショナル ジオグラフィック社 価格:本体4600円+税 7月6日発売 ナショジオストア  アマゾン  

野町和嘉(のまち かずよし)

1946年高知県生まれ。1971年からフリーの写真家として活動を始め、写真集の出版や写真展開催など国際的な活躍を続ける、日本を代表する写真家の一人。1987年8月、ナショナル ジオグラフィック英語版の特集「サハラ砂漠の岩絵」に写真が掲載された。過酷な風土を生き抜く人々の営みと信仰をテーマに、サハラ砂漠を皮切りに世界各地で撮影を続けてきた。2015年7月に写真集『極限高地』を出版する。


高橋盛男(たかはし もりお)

1957年、新潟県生まれ。フリーランスライター。自動車専門誌の編集を手がけたのちフリーライターに。JR東日本新幹線車内誌「トランヴェール」、プレジデント社「プレジデント」「プレジデントファミリー」などに執筆。