第2回 人生をかけた巡礼者の祈り

 インカ帝国は16世紀、スペインに征服され、この地にキリスト教が入ってきますが、その後にキリストの化身である少年が、クスコ東方山麓の岩山に現れたという伝説が生まれます。コイユリーテの巡礼は、この伝説に由来しています。

 エチオピアの巡礼は、クリスマスに高地のキリスト教聖地にある教会を詣でるというものです。おびただしい数の人々が、何日も野宿をしながら教会にやってくるのです。いずれも、おそらくは土着の宗教と、新しく入ったキリスト教が融合して、今日に伝えられるようなかたちに変容したものと思われます。

 こうした宗教行事や宗教儀式には、その土地の風土や信仰に根差した合理性もあるんですよ。チベットの鳥葬などは、その典型です。

――鳥葬というと、亡骸を鳥に食べさせるのですか。

 そうです。4000メートルもの高地では樹木が育ちませんから、火葬にするにも薪がありません。土葬にしても、地面の下は数センチも掘れば半永久凍土ですから、亡骸が容易に分解されないわけです。

 一方、チベットでは、人間は死んでもその魂が死ぬわけではない。49日が経てば、魂は別の体内に入って生まれ変わると考えられています。ですから、鳥葬は、死者の魂が抜けたあとの抜け殻を、鳥など他の生き物の命をつなぐために役立ってもらおうということなのです。

コイユリーテの巡礼で、標高5000メートルの氷河に十字架を立てるために登ってゆく、ウクク(熊)と呼ばれる男たち。ペルー、2004年撮影。写真集『極限高地』より
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