第2回 人生をかけた巡礼者の祈り

――カイラス山は、山容の美しい山ですね。

 チベット高原の西部にある標高6700メートルくらいの山です。チベット仏教、ボン教、ヒンドゥー教、ジャイナ教の聖地となっています。

 カイラス山のあるチベット辺境地域は、1980年代後半になっても入境許可がなかなか下りない場所で、1990年に初めて行ったときはテレビ撮影のクルーに同行したのですが、ラサで許可を取るのに何日も足止めされたりしましたね。

 カイラス詣では、山を一周する52キロの道です。僕がカイラスに興味を持つようになったのは、カイラス巡礼のドキュメンタリー番組でした。そのなかに、20年もかけて五体投地でカイラスを目指して来たという巡礼者がいて驚かされました。

 僕がカイラスに行ったときも、52キロの巡礼路を五体投地でめぐる巡礼者を目にしたわけですが、そうなると巡礼は当人にとってはもう人生をかけた大仕事ですね。チベットの人々は、徳を積めば来世も人間に生まれ変われるという仏教の教えを信じきっていますから、それほどまでにひたむきになれるのだと思います。

――写真集ではアンデスとエチオピアでとらえた、巡礼者の長い列もとても印象に残ります。

 アンデスのコイユリーテ巡礼は、インカの聖域だった標高5000メートルの氷河に、十字架を立てるために登っていくというものです。

カイラス山をめぐる巡礼団。仏教徒、ヒンズー教は右回りで、ボン教徒は左回りで巡礼する。中国チベット自治区、1990年撮影。写真集『極限高地』より
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