――新たに出版される写真集のタイトルは『極限高地』。このテーマに至った背景を、まず教えてください。

 今回の写真集に収めたのは、チベット、アンデス、エチオピアの3つの地域。標高2000メートルから4000メートルを超える高地の自然と、そこに暮らす人々の姿です。

 この3カ所は僕が何度も足を運び、写真を撮り続けてきた場所なんですよ。エチオピアは1981年が最初ですから、もう30年余り前になりますね。チベットは1988年からで、アンデスは2002年からです。

 標高の高いところは、文化、生活にクセがあるというか、僕たちが暮らす平地とはかなり違った独特なところがあります。地理的にも孤立しているし、植生に限界があるので食べ物も乏しい。チベットなどは、耕作地がほとんどありませんからね。

――標高4000メートルといえば、富士山より高い地域ですよね。そこでの暮らしぶりはちょっと想像がつきません。

 たとえばチベットですと、夏はまあまあ過ごしやすいのですが、真冬はマイナス30度以下に気温が下がります。そんな環境でも、生き抜いていくための知恵を、彼らは備えているわけです。

 チベットの遊牧民は、ヤクという牛の仲間を放牧して暮らしますが、このヤクなしでは彼らの生活は成り立ちません。肉は食用にしますし、ヤクの毛は水をはじくのでテントや衣類にも使われます。絞った乳は飲むほかにチーズやバターにもしますが、バターは寺院で手向けられている灯明にも使われます。

トチャと呼ばれる化粧をした遊牧民の娘。紫外線や乾燥から肌を守る効果がある。中国チベット自治区、カイラス、1990年撮影。野町和嘉『極限高地』より
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野町和嘉 写真集『極限高地 チベット・アンデス・エチオピアに生きる』
標高4500メートルの高地で暮らす人々がいる。チベット、アンデス、エチオピアの3カ所は、人間にとって限界に近い高地だが、その地に暮らし、独自の文化を育んできた人々がいる。 一般的に高地は酸素が薄く、植生に乏しく、人が暮らすには向かない土地だ。だが、この3カ所は恵まれた自然条件や、長年かけて培った知恵によって、人々が暮らすことができた。しかも、低地にはない独自の文化を築き、奥深い伝統を保っている。高地の独自性に魅かれ、この3地域をめぐった写真家、野町和嘉が、極限の地の生活と雄大な自然を活写する。
出版社: 日経ナショナル ジオグラフィック社 価格:本体4600円+税 7月6日発売 ナショジオストア  アマゾン  

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