ラスト1週間になってコアリングが始まりました。そしてコアリング(コア試料を回収しながらの掘削)が始まると同時にワタクシ達は目の前にある屹然(きつぜん)とした事実を知ったのです。「もしかして圧倒的に処理・分析の人手が足りていない...」という今そこにある危機を!!始まる前は、「まあコアリングはあくまでセカンドオプションだから...」と余裕をかましていました。それに「まあ最悪、一人が二人分働いて一週間徹夜すればええだけやろ。そういうもんやろ」とできもしないことがあたかもできるかのようなブラック企業体質を完備していたのです。

 実際コアリングを開始してから2日もすれば、ほとんど寝る暇のないコア分析班の心は荒(すさ)みきっておりましたとも。陸上からやってくる無慈悲な連絡には長州力と橋本真也の「コラタコ問答」で応答し、そしてワタクシはもはや首席研究者なんて艶っぽいものではなくて、単なるコア奴隷と堕(だ)しておりました。なので「好きなところを好きなように掘る」という当初の目論見はどこへやら。もはや「海のジパング計画」として「やるべきこと」を完遂することで精一杯でした。

「もしもちきゅうが使えたなら」の状況ではあるものの、その現実は「今2時間寝ることができる以上のことは何も望まない。オンリー・オフトゥン(編集部注:お布団)・プリーズ」でしかなかったのです。

 それでも航海終了間際、「ワタクシのようなコア奴隷がこんなに寝てもいいんでしょうか」と人生の価値観が変わりそうになりながらも6時間睡眠が取れた時、ようやく正常な思考が戻ってきて、「もしも・ちきゅうが・使えたなら、想いの・すべてを・研究計画にして、君に・伝える・ことができる人員は十二分に準備すべきンゴ!」という至極まっとうな結論に至りました。

「ちきゅう」に乗船して研究する経験4回。そのうち首席研究者としての経験2回、オフトゥンもない冷たくて固い机や椅子の上で仮眠をむさぼるコア奴隷としての経験2回。まだまだワタクシの「もしもちきゅうが使えたなら」計画は夢半ばです。

2014年7月26日に中城港に入港した「ちきゅう」をたくさんの沖縄の人達が見に来てくれました(もちろん船内の公開などなかったのですが)。「ちきゅう」が出港する日も多くの人が見送りに来てくださり、その一人の方がツイッターに挙げてくれた「夏ガールとちきゅうの別れin Okinawa 2014」の写真(後ろ姿の女の子に掲載許可を頂きました。有り難うございます)
2014年7月26日に中城港に入港した「ちきゅう」をたくさんの沖縄の人達が見に来てくれました(もちろん船内の公開などなかったのですが)。「ちきゅう」が出港する日も多くの人が見送りに来てくださり、その一人の方がツイッターに挙げてくれた「夏ガールとちきゅうの別れin Okinawa 2014」の写真(後ろ姿の女の子に掲載許可を頂きました。有り難うございます)
[画像をタップでギャラリー表示]

 ふふふ、ラスト前にちゃくちゃく積み重ねられてきたこのリレー連載の世界観を台無しにしてやりましたよ~。さあこのリレー連載のラストバッターは、「ちきゅう」を司るJAMSTECの地球深部探査センターの実質の司令塔である倉本真一センター長代理です。多分、クルリンパってうまくまとめちゃうんでしょうけど、実は倉本さんって、一見凄く落ち着いた沈着冷静な司令官っぽいけど、実はピッチピッチの革つなぎでハーレーダビッドソンを操る「キリン」なんですよ。みなさん「ちきゅう」を操る男の名言を期待しましょう。

高井 研(たかい けん)

JAMSTEC深海・地殻内生物圏研究分野 分野長(理学博士)。超好熱菌の微生物学、極限環境の微生物生態学、深海・地殻内生命圏における地球微生物学を経て、現在は地球における生命の起源・初期進化における地球微生物学および太陽系内地球外生命探査にむけた宇宙生物学を研究。第8回日本学術振興会賞(2012年)、第8回日本学士院学術奨励賞(2012年)など受賞。

地球深部探査船「ちきゅう」

2005年7月29日、建造完成。科学的調査や研究のために海底下7000メートルまで掘削することが可能。世界トップクラスの掘削能力を使って、地中深くからコアサンプルを採取し、地球の内部構造や巨大地震発生のメカニズム、生命誕生の謎などを解き明かそうとしている。2007年からは、日米が主導する統合国際深海掘削計画(IODP)の主力船として、南海トラフ地震発生帯や下北半島八戸沖の石炭層、東北地方太平洋沖地震の発生帯、沖縄熱水海底下の生命圏の掘削を実施してきた。究極の目標は、人類未踏のマントル到達だ。 全長:210メートル(新幹線約8両分)●幅:38メートル(フットサルコートの長さ)●船底からの高さ:130メートル(30階建てビル)●国際総トン数:56.752トン●最大乗船人員:200人●航海速力:12ノット(時速約22キロ)●航続距離:約14,800海里(27,410キロ)

この連載の前回の
記事を見る

この連載の次の
記事を見る