第8回 高井研 ♪もしも〜「ちきゅう」が〜使えたなら♪

 ワタクシ、「沖縄の深海熱水を掘るならワイの出番や!!」とばかり可及的速やかに首席研究者に名乗り出ましたよ。そして、「ちきゅう」の掘削オペレーションの親分である猿橋さんや技術部門代表の許さんも「久しぶりに好きなように海底熱水をぶち抜くぜぇぇぇ。ガンガン金属資源を回収してやるぜぇぇぇ」とノリノリでした。

 彼ら掘削部隊もたまには「研究者の細々した要求通りにチマチマ掘削するだけじゃなく、一攫千金山師的な掘削をしてみたい」と思っていたかもしれません。このリレー連載第4回の澤田さんが書いているように、技術者の多くは、元々石油掘削の世界で生きてきた人たちなので、こういう宝探し掘削は血が滾(たぎ)るようです。

 そんなこんなで2014年7月9日に清水港に集合した急造「ココ掘れワンワン」研究隊は8名程度の小パーティー。「ちきゅう」出港のお見送りも数名というIODP航海では考えられないような質素なものでした。でも全然寂しくはなかったです。アノ巨大な「ちきゅう」を、大きな研究スペースを、たった8名程度で独占できるのですから開放感満載でした。お目付の「研究支援統括」の久保さんがシフト明けでいなくなったら、広々とした研究スペースで船上テクニシャンの人たちと野球やらゴルフやらチャンバラやら遊び放題。「ちきゅう」独占の至福を味わっていました。ふ、その時がやってくるまではね...。

名護湾で「ちきゅう」のやぐらのてっぺんから眺める名護市や恩納村の海岸線。まだこの頃はよかった。「ちきゅう」独占の至福をかみしめていた時代。(提供:高井研)
名護湾で「ちきゅう」のやぐらのてっぺんから眺める名護市や恩納村の海岸線。まだこの頃はよかった。「ちきゅう」独占の至福をかみしめていた時代。(提供:高井研)
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 回航途中の沖縄の名護でもう10名程度の研究者を追加で招集し、総勢20名弱の研究チームになってから本番の掘削開始です。この掘削航海では、「コア試料を回収しない掘削で(コア試料を回収しながらだと3倍ぐらい時間がかかる)海底下の熱水溜まりや鉱床を見つけ、その規模を見積もる」という画期的な技術開発が一つのテーマだったので、石油掘削で大きな武器として用いられてきたLWD(掘削同時検層:掘削しながら地層の温度や性質を調べる)を海底熱水掘削に初めて応用し、海底下熱水溜まりや黒鉱鉱床の検出に挑戦しました。

 そのLWDのための研究者が4名ぐらい配備されていました。また「ちきゅう」に搭載された無人探査機(ROV)を用いた掘削後環境影響評価の事前調査のための研究者が6名ぐらい乗船していましたので、実質、コア試料の分析や処理を行う研究者は8名程度だったと思います。そして、LWDによる掘削も順調に進み、いよいよその検層データの有効性を証明するために、実際の海底下コア試料を採って「答え合わせ」をする必要がありました。さらに「ギラギラの黒鉱をザックザック回収し、アッツアッツの真っ黒な高温熱水をバフバフ噴かせる」ための黒い欲望に塗(まみ)れた掘削も必要です。

深海熱水域の高温熱水地帯に挑むLWD編成の先っぽ。なんてことのないドリル先端にみえるでしょう。でもお高いんでしょう?ええ、お高いんです。(提供:JAMSTEC)
深海熱水域の高温熱水地帯に挑むLWD編成の先っぽ。なんてことのないドリル先端にみえるでしょう。でもお高いんでしょう?ええ、お高いんです。(提供:JAMSTEC)
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