JAMSTECの地球深部探査船「ちきゅう」の乗船研究者や技術者によるリレーブログ。第7回は海底下の微生物の活動を解明すべく、研究を続けるJAMSTEC高知コア研究所の諸野祐樹さんが登場。「ちきゅう」の船上で遭遇した東北地方太平洋沖地震の衝撃、海底下の微生物を探すための秘策、そして、採取した試料をじっくり調べた末に検出された生命……。諸野さんによれば、極限の世界に生きる微生物を知るのに必要なのは、何より根気だという。(編集部)

掘削作業の心臓部ドリルフロア。一度作業が始まると昼夜を問わず、海底下を掘り進め、試料やデータをとり続けていく。(提供:JAMSTEC/IODP)
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 2011年3月11日、アメリカでの招待講演を一日早く切り上げ、僕は八戸港に停泊中の「ちきゅう」実験室にいた。3月21日からヘリで乗り込むことになる統合国際掘削計画(IODP)337次掘削航海で使用する研究機器のセットアップに来たのだ。

 今回の航海は色々と異例尽くめだ。僕が所属する高知コア研究所の研究室からいくつもの研究機器を持ち込み、研究室を丸ごと引っ越すくらいの準備を進めている。こんなことは普通の研究船では絶対不可能だ。「ちきゅう」の安定性、広大な実験スペースがあって初めて可能となる。また、個人的な驚きもあった。研究機器のセットアップのため乗船してきたメーカー担当者、なにやら見た顔だな、と思ったら高校の同級生だった。卒業以来16年ぶりの、奇跡の再会だった。

 昼食を取り、業者さんと打ち合わせをしながら機器のセットアップを続けていたそのとき、外洋を航海しているときの船でも体験したことの無いタイプの揺れを感じた。これが東日本大震災の揺れだったと知ったのは、ずいぶんと後になってからだった。

「ちきゅう」船内は、航海中の揺れを想定して全ての物品が配置されているため、激しく揺れても物が落ちてきたりすることはない。何事が起こっているのかわからない揺れが収まり、周りの人と「今のって何だったんだ??」と話していたところ、船内にベルの音が鳴り響いた。短音7回、その後に長音1回、非常召集信号だ。

「ちきゅう」に限らず、科学掘削船に乗船すると、一週間に1回、必ず非常召集訓練が行われる。救命胴衣をつけ、ヘルメットをかぶり、定められた非常時の集合場所に集まる。訓練以外であの音を聞いたことは、後にも先にもこのときだけだ。僕は若干戸惑いながら救命胴衣をつけ、上記の同級生や他の業者さん、同僚達と共に集合場所のビデオシネマルームへ向かった。このとき、「ちきゅう」は押し寄せる津波と闘っていた。

津波から3日間、「ちきゅう」船内でともに生活した皆さんと、下船前に撮影したスナップ。 幸い、乗船者は全員無事だった。(提供:吉澤理)
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