第7回 諸野祐樹 海底下の生命探し、何より根気が必要

 航海から既に3年。現在、僕は見つけた微生物が生きているのか死んでいるのかを、微生物が栄養を取り込むという生命活動を通じて調べる実験をしている。海底下にいる微生物は、一般的に長生きが多いと考えられている。長生きといっても、微生物の場合は一つの細胞が全く同じ二つの細胞に分裂するため、寿命という概念は無い。この分裂までの時間が陸上の微生物に比べて長いと考えられているのだ。理由は単純。十分な栄養が無く、十分に呼吸が出来ないから。海底下の微生物は、そんな極限的な環境に曝(さら)されているため、ゆっくり生きている。こんな微生物が生きているか死んでいるか、それを調べるためにはこちらも長く待たなくてはならない。

 航海の直前に生まれた娘は先日、3歳の誕生日を迎えた。航海終了直後にエサを与えて培養を始めたガラス瓶も3年間の培養を経て、分析を始めている。大深度の海底下に潜む微生物の活動を調べるには何事も根気が必要。これからも辛抱強く彼らの小さな声を聞く実験は続く。

 さて、次回はWebナショジオでもおなじみの微生物ハンター高井さん。初めて会ったのは多分15~6年前。雲の上の人で、いつ怒られるか、何を話していてもビクビクしていたが、最近は高井さんと話すのがずいぶん楽しい。それは僕が成長したからか、それとも高井さんが丸くなったのか、どっちですかね、高井さん?

諸野 祐樹(もろの ゆうき)

JAMSTEC高知コア研究所地球深部生命研究グループ グループリーダー代理、主任研究員。福井県福井市生まれ。石川県金沢市で幼少期を過ごし、父の転勤で東京へ。2004年 東京工業大学大学院 生物プロセス専攻修了 工学博士。産業技術総合研究所で2年半ポスドク生活を送った後、2006年からJAMSTEC高知コア研究所に勤務。三児の父。現在の専門は地球微生物学。

地球深部探査船「ちきゅう」

2005年7月29日、建造完成。科学的調査や研究のために海底下7000メートルまで掘削することが可能。世界トップクラスの掘削能力を使って、地中深くからコアサンプルを採取し、地球の内部構造や巨大地震発生のメカニズム、生命誕生の謎などを解き明かそうとしている。2007年からは、日米が主導する統合国際深海掘削計画(IODP)の主力船として、南海トラフ地震発生帯や下北半島八戸沖の石炭層、東北地方太平洋沖地震の発生帯、沖縄熱水海底下の生命圏の掘削を実施してきた。究極の目標は、人類未踏のマントル到達だ。 全長:210メートル(新幹線約8両分)●幅:38メートル(フットサルコートの長さ)●船底からの高さ:130メートル(30階建てビル)●国際総トン数:56.752トン●最大乗船人員:200人●航海速力:12ノット(時速約22キロ)●航続距離:約14,800海里(27,410キロ)