番外編 稲垣史生「海底下に世界最深の生命圏を発見」のここがスゴイ!

冥王星などの地球外惑星に匹敵するフロンティア

 仮に、海底下数kmの深部環境であっても、そこに水と栄養・エネルギー源となる物質の持続的な供給がある地質学的な条件であれば、未だ発見されていない微生物生態系が地球の深部に存在するかもしれない。また、海底下における生命および生態系の進化は、ダーウィンの進化論に代表される地表生命圏の進化プロセスとは全く別タイプの真理があるかもしれない。それらの仮説は、将来の「ちきゅう」による科学掘削プロジェクトによって明らかにされるだろう。

 今回、米科学誌サイエンスに発表された論文の研究成果について、同誌はトップストーリーの一つとして取り上げた。サイエンス誌の記事は、「(地球深部の生命探査は)冥王星に行くようなものだ」と最近のNASAの探査機「ニューホライズンズ」の話題にたとえ、「(海底下の森の発見は)冥王星でマクドナルドをみたような驚き」と解説している。日本が世界に誇る地球深部探査船「ちきゅう」は、海底下約7000mまで掘削できる能力を持つ。「ニューホライズンズ」は48億kmの宇宙の旅を無事に終えつつあるが、「ちきゅう」の40億年以上の生命と地球の進化をひも解く旅は、まだ始まったばかりだ。

青森県八戸市の沖合約80kmの地点で掘削調査を行う地球深部探査船「ちきゅう」。(写真提供:海洋研究開発機構)
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稲垣 史生(いながき ふみお)

澤田郁郎

海洋研究開発機構(JAMSTEC)高知コア研究所の研究所長代理・上席研究員。海底下の生態系を「未知なる第三の生命圏」と位置付け、その解明に挑む。今回の発見の基となった「ちきゅう」の統合国際深海掘削計画(IODP)第337次研究航海では、共同首席研究者を務めた。

地球深部探査船「ちきゅう」

2005年7月29日、建造完成。科学的調査や研究のために海底下7000メートルまで掘削することが可能。世界トップクラスの掘削能力を使って、地中深くからコアサンプルを採取し、地球の内部構造や巨大地震発生のメカニズム、生命誕生の謎などを解き明かそうとしている。2007年からは、日米が主導する統合国際深海掘削計画(IODP)の主力船として、南海トラフ地震発生帯や下北半島八戸沖の石炭層、東北地方太平洋沖地震の発生帯、沖縄熱水海底下の生命圏の掘削を実施してきた。究極の目標は、人類未踏のマントル到達だ。 全長:210メートル(新幹線約8両分)●幅:38メートル(フットサルコートの長さ)●船底からの高さ:130メートル(30階建てビル)●国際総トン数:56.752トン●最大乗船人員:200人●航海速力:12ノット(時速約22キロ)●航続距離:約14,800海里(27,410キロ)