JAMSTECの地球深部探査船「ちきゅう」の乗船研究者などによるリレーブログ。第3回は、「ちきゅう」や米国の科学掘削船に何度も乗り込んだ経験をもつ、「断層ハンター」を自負する海洋地質学者の斎藤実篤さんが海底下の断層を見つけ出す方法を教えてくれます。そして、もっとも印象に残っているという「東北地方太平洋沖地震調査掘削(JFAST)」で、水深7000メートルの海底からさらに1000メートルの穴を掘るという、前代未聞の挑戦を成功させ、地震を引き起こした断層にたどり着くまでの、緊張感いっぱいの現場の様子を教えてもらいます。(編集部)

地球深部探査船「ちきゅう」に搭載されているライザーパイプ(直径約50センチ)。「ちきゅう」はライザー掘削機能を備えた世界唯一の科学掘削船で、海底下7000メートルまで掘削できる。ライザーパイプをつなぎ合わせて船と深海底が連結される。ドリルパイプに流し込んだ比重の高い流体がライザーパイプの内側を通って船に戻る二重管構造によって、穴の圧力バランスが保たれ、海底下を安定かつ安全に掘削することが可能となる。ただしこの機能が使えるのは水深2500メートルまで。「東北地方太平洋沖地震調査掘削(JFAST)」では、ドリルパイプのみで水深7000メートルの海底に挑んだ。(提供:JAMSTEC)
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 ブログのバトンを渡してくれた江口氏との付き合いは長い。ポスドク時代を経て、それぞれがようやく職に就いた若かりし頃、「将来の海洋掘削科学は俺たちが牽引する!」と中野の居酒屋「おいどん」でともに豪語したあの「宣言」から15年。それぞれが違う役割で活路を切り開き、海洋掘削の世界にどっぷりと浸かっている。そして今でも酒を酌み交わしては未来を語り合う朋友である。

「ちきゅう」が建造される前から海洋掘削科学の未来を語り合った15年来の朋友、Nobu & Sanny。学会が開催されたサンフランシスコのパブにて。ちなみに2人ともこの写真を撮影された記憶が無い。(提供:斎藤実篤)
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 まずは自己紹介をしておこう。もともとは地質学専攻で学生時代は陸上の地質の研究をしていたが、海洋地質へと守備範囲を広げ、海洋掘削に憧れを抱くようになる。米国の科学掘削船「ジョイデス・レゾリューション(以下「JR号」)」に初めて乗船したのが博士課程を修了した1993年。その後コロンビア大学に留学して、掘削孔に計測機器を下ろして海底の地層を計測する「検層」という手法を学び、4度のJR号航海に検層専門家として乗船。その後一転、海洋掘削の国際管理組織で2年間、江口氏とともにプロジェクトマネージメントの任務を果たす。2007年には研究現場に復帰して「ちきゅう」の最初の研究航海へ乗船し、その後も「ちきゅう」と「JR号」に繰り返し乗船してきた。検層という武器で世界各地の断層を見つけ出す「断層ハンター」であると自負する。

 何がこれほどまでに私を掘削科学一筋に突き進ませたのだろうか? それはおそらく純粋な学問的な興味だけではない。2カ月にわたる研究航海では、ベテランから若手まで世界の第一線で活躍する研究者たちと出会い、次々と船上に上がってくる未知の海底下サンプルに目を輝かせ、毎日のように発見と議論が続く。さまざまな分野の研究者が協力し、時には衝突しながらも研究成果を築き上げ、航海が終わる頃には研究者同士の絆は深まり、共同研究者としての関わりは長期にわたる。このような研究航海は、一つのエピソードとして永久に記憶に残るものだ。1年の留学よりも2カ月の科学掘削船での研究生活の方がはるかに濃密でexcitingなのである。それが何度目であっても、航海の乗船地に着いて科学掘削船が目の前に現れた瞬間、言いようのない高揚感を覚えるのは、それまでに経験したexcitingな2カ月の記憶がよみがえるからなのだろう。

ナショナル ジオグラフィック日本版 2015年7月号

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