第1回 江口”Nobu“暢久 「研究支援統括(EPM)」って何?~その1~

JAMSTECの地球深部探査船「ちきゅう」の乗船研究者によるリレーブログ。第1回は研究支援統括を努める江口暢久さんの登場です。「ちきゅう」には、海底下を掘削してコアサンプルやデータを手に入れる掘削のスペシャリストと、それらを材料に地球の知られざる姿を解き明かす科学のスペシャリストが乗り組んでいます。この二つのスペシャリスト集団の調整役として、江口さんは「ちきゅう」のチカラを最大限に引き出そうと日夜奮闘しています。巨大科学掘削船を“よいしょ”と支える「研究支援統括」のお仕事について、江口さんに教えてもらいます。(編集部)

世界屈指の科学掘削船「ちきゅう」。その巨大な船体には最新の掘削装置や研究施設が備わっている。しかし、やっぱり重要になるのは、掘削を担う技術者と研究者とのチームワークだ。(提供:JAMSTEC)
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「澤田さん、申し訳ないけど、もう5分いいですか?」
「まだ延ばすのか? あと5分だけだぞ、今のところ孔内状況は良さそうだし」

 同じようなやりとりを何回繰り返しただろう。僕たちは、紀伊半島沖の水深2054メートルの海底に開けた孔の中に計測機器を下げて、海底下900~1540メートルの孔内で地層の圧力を測定していた。科学掘削では初めての試みだ。リアルタイムでデータが上がってくる狭いコンテナラボに、普段の3倍以上の人が入って、小さなモニターを熱心に見つめている。良いデータが上がってきている。

 研究者たちはできるだけ多くの深度で測定を行いたい。しかし、掘削を行う技術者たちは、掘ったままの状態で何が起きるかわからないオープンホール(これに対して、鉄のパイプを挿入して孔壁が崩れないようにしたものをケーストホールという)に機器をぶら下げている時間はできるだけ短くしたい。私が話しかけている澤田は「ちきゅう」の船上代表。船上作業を行う上で最上位のポジションだ。

「澤田さん、申し訳ないけど、もう5分」
「またか? あと5分だけだぞ」

「ちきゅう」の船上から海底に掘った孔へと、地層の圧力を測る機器が送り込まれていく。ワイヤーでつながれていて、船上のコンテナラボにリアルタイムでデータが送られてくる。(提供:JAMSTEC)
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 実験は夜まだ早い時間に始まったが、時計の針はとっくに真夜中を過ぎている。コンテナラボの隅の方で寝始めている研究者も出てきた。その後もまだ何層かの測定を行った。

「江口、そろそろ終わりにしよう。ツールを引き上げるぞ!」

 満足できるデータが無事に取れた。引き延ばすのもここまでにしよう。船上に計測機器が引き上げられ、研究者をそれぞれのキャビンに戻し、我々がラボを後にした時には東の空は明るくなっていた。2時間半後にはその日の業務打ち合わせ会議があり、そこからまた一日が始まる。キャビンに戻って一寝入りする時間があるであろうか? それともシャワーを浴びるだけにしてコーヒーか? 朝食もそろそろ始まるし、そういえばおなかもすいてるな。

南海トラフ地震発生帯の掘削のために2009年5~8月に実施された統合国際深海掘削計画(IODP) 第319次航海での一コマ。共同首席研究者の米コネチカット大のティム・バーン教授、米サザンプトン大のリサ・マクニール教授、澤田船上代表と私。(提供:JAMSTEC)
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☆「ちきゅう」トリビア☆

「ちきゅう」のオペレーションは24時間続く。なので、食事は1日4回。午前と午後の6時と12時の前後1時間ずつが食事時間だ。