第1回 宇宙で最初に生まれた星、ファーストスター

最初の超新星

 誕生してから数百万年ほどで、原始の巨星たちは核に蓄えていた燃料を使い果たした。自らを内部から支えていた外向きの放射圧がなくなると、巨星は崩壊し、今日宇宙で観測できるどんな現象よりも破壊力のある超新星爆発が起こった。そのときの超新星爆発からどんなことが実際に起きたのかは、詳しくはわからない。現在でもさまざまな説が代わる代わる登場している。この爆発で恒星は完全に破壊されたため、ブラックホールすら一つも残らなかった、とする説もあれば、太陽数十個分の質量のブラックホールがその後にできた、とする説もある。こうしたブラックホールの名残は融合あるいは結合し、現代の多くの銀河の中心部にあるとてつもない規模のブラックホールができる理想的な環境を作った、という考えを2002年に発表したのは、カリフォルニア大学サンタクルーズ校のピエロ・マドーとケンブリッジ大学のマーチン・リーだった。どのプロセスを経たとしても、巨大な星たちが崩壊したおかげで、初期の銀河に存在する重元素が宇宙空間にまき散らされたことは、ほぼ間違いないと見られている。

天体が発するかすかな熱、宇宙赤外線背景放射。最も高性能な望遠鏡を使っても地上からは決して見ることはできない。2005年、科学者たちはNASAのスピッツァー宇宙望遠鏡を使ってこれを測定しようとした。こうした天体が発する赤外線(上の画像)を天空の全体画像から抜き出すと、微弱な赤外線シグナルを検出できる(下の画像)。この光は第一世代の星、つまり宇宙が誕生して後、一番最初に現れた星が発しているものと考えられている。赤方偏移しているため、目には見えない。(NASA/JPL-Caltech/A. Kashlinsky (GSFC))
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 種族IIIの恒星が果たしたもう一つの役割は、銀河間物質の再電離(再イオン)化だ。水素分子がいったん生成された後に、宇宙を暗黒時代に突入させる重要な役割を果たす一方、現在の銀河間に存在するガス雲の大半は電荷を帯びた水素イオン、平たく言えば結合していたのが再び分離した原子でできている。こうしたイオン化は通常、強烈な紫外線によって引き起こされる。原始の星も、強烈な紫外線を照らしていたことになる。

 初期の宇宙に種族IIIの巨大星、ファーストスターがあったと考えれば、宇宙論学者たちが抱えていた問題のいくつかは解決する。しかし、それですべてがうまく収まるわけではない。これほど高温の環境でガス雲が収縮して恒星が生まれた具体的なメカニズムについては、まだわからないことがたくさんある。水素分子ができたことで温度が下がったという説明に誰もが納得したわけでもなかった。2008年に、カリフォルニア大学サンタクルーズ校のダグラス・スポイラー率いる天文学者のチームは、興味をそそられる理論を唱えた。原始の恒星を光らせていたのは、ダークマター(暗黒物質)の正体かもしれないとされるニュートラリーノの対消滅(物質と反物質が衝突して消滅する現象)が起きたときに生じたエネルギーだというのだ。この物質がダークマターを通常の物質に変え、核融合反応を起こせるほど恒星の核を凝縮させたと彼らは考えている。

 もう一つ、ファーストスターは現在広く考えられているほど巨大だったわけではなかったとする説もある。NASAのジェット推進研究所の細川隆史のチームが2011年に、新しいシミュレーション結果を発表した。それによると、原初の宇宙に形作られようとしていた巨星は、膨大な量の物質を噴出していた。中心の核めがけて落下する物質の供給はやがて止まるため、35太陽質量を超えて大きく育つことはなかった。このモデルの恒星は、種族IIIとほとんど同じ役割を引き受けることができたし、ブラックホ-ルを作った超新星が果たした仕事のかなりの部分についても、ひけを取らないほどの役割を果たせたと考えられている。

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ジャイルズ・スパロウ

ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンで天文学を、インペリアル・カレッジ・ロンドンでサイエンス・コミュニケーションを学ぶ。作家やコンサルタント、寄稿者などさまざまな立場で、数多くのポピュラー・サイエンス関連書籍に関わる。