第1回 宇宙で最初に生まれた星、ファーストスター

テーマ:宇宙で最初に重い元素を生み出し、現在の銀河を作る種をまいた、第一世代の大質量星たちの存在。
最初の発見:1970年代、宇宙の歴史には第一世代の星の存在が不可欠であることに気づいた。
画期的な発見:2002年、ダークマター(暗黒物質)の周りでファーストスターが誕生した経緯を、科学者たちが示した。
何が重要か:宇宙が現在の姿になるのに、ファーストスターは重要な役割を果たした。

原初の宇宙を照らす、最初に生まれた星の光を描いた想像画。こうした恒星のほとんどは爆発し、超新星となった。そのときの衝撃波によって、質量の重い元素が宇宙全体に行き渡った。(Adolf Schaller for STScI)
[画像のクリックで拡大表示]

 原始の宇宙を満たしていた高温度の霧が晴れ渡ると、宇宙は「暗黒時代」と呼ばれる光のない時期に入った。このときに放射圧が突然取り除かれたため、重力に引っ張られた物質がくっつき始めた。そのほとんどが質量の軽い水素とヘリウムで、重い元素であるリチウムとベリリウムはごく微量しかできなかった。この物質が、宇宙創成の早い時期から形づくられていたダークマターの固まりの周辺で融合し始めた。コンピューターを使ったモデルや観測から得られた証拠をもとにその後の宇宙の様子を考えると、最初にできたのは銀河のような複雑な構造体ではなく、桁外れに巨大な恒星だった。

巨大太陽の時代

 巨大な恒星、ファーストスターが宇宙創成の初期に存在していたはずだと考えられるのは、次のような理由からだ。まず現在、私たちが見ることのできる恒星は「種族I」「種族II」という二つのグループに分けられる。このうち古い星は、種族IIに分類される。種族IIの恒星は宇宙の歴史の初期に生まれ、最も軽い元素である水素とヘリウムで主にできている。球状星団や銀河の中心には、この種族IIの恒星が集まっている領域がある。そこには、なぜか原始宇宙で恒星を形づくったと考えられる元素の割合よりもはるかに多い割合で、重い元素が含まれている。もしビッグバンの少し後に生まれた寿命の短い星、いわゆる「種族III」とでもいうべき恒星が種族IIに先立つ第一世代として存在していて、それが最初の銀河を構成する素材として重い元素の種をまき散らしたと考えれば、謎は解ける。

 種族IIIのような恒星があったはずだと考えられるようになったのは、1970年代後期のことだった。1990年代になり原始銀河を含む遠方の宇宙の様子が明らかになると、原始銀河がすでに重い元素に満たされていたことがわかった。この事実に沿って考えると、種族IIIの恒星がかつて存在し、それが宇宙の進化のなかでも特別な役割を果たしていたとする考えが有力になった。

 ビッグバンからおよそ1億5000万年後に種族III、すなわちファーストスターができた。そのときの状況を詳しく分析した結果を、イェール大学のボルカー・ブロム、パオロ・S・コッピ、リチャード・B・ラーソンが2002年に発表した。当時の宇宙は比較的高温だったため、恒星ができるもととなったガスは動きが速すぎて、なかなか星の形にはまとまれなかった。ところが、一つ一つの水素原子核が互いに結合して水素分子になったことで、ダークマターの核の周囲に集まったガスの固まりが冷やされた可能性があることを彼らは示したのだ。こうしてできた動きの遅い水素分子ガスは収縮して原始星となり、周囲からさらにガスを引き入れられるほどの重力をもち始めた。原始星が高温になると、分子は再分離した。そのうちに核融合が始まり、水素からヘリウムが作られた。このとき新しくできた恒星には質量の重い元素が含まれていなかったため、核融合反応を抑制しながらも、桁外れに巨大化していった。こうしてできたファーストスターはたった一つでも太陽数百個分の質量があり、分裂することもなかったため、現在観測できるどの星よりも大きかった。これほどまでに巨大な星は自分の内部にあるエネルギー源をすさまじい勢いで消費する。恒星の寿命が訪れるまでの間に核融合が進み、内部にあったヘリウムが重い元素に変化していったのである。