本書の内容

名作地図から埋もれた逸品まで、地図の発展とその背後の苦闘をビジュアルに俯瞰する。

地形図、市街図、観光地のイラストマップ、軍用地図、情報を視覚化した地図、都市計画図、天体図、テレビドラマの小道具、海図……。ひとくちに地図と言っても、それが表現する情報は世界のあらゆることに及ぶ。
本書では有名無名を問わず、図書館や公文書館の隅々まで地図を探し、関係者に取材し、これまで語られてこなかったエピソードと見ごたえのある地図を紹介する。1枚の地図を仕上げるまでに、どのような発明がなされたのか。どのような努力がはらわれ、どのような技量が披露されているのか。
15世紀の黙示録図から月面や海底を詳細に描いた初めての地図、紳士の身だしなみの懐中地球儀、スキー場の案内マップ、無限に増殖する芸術としての地図、さらに人気ドラマの地図まで。
芸術と科学、精緻と想像がひとつになり、あらゆるものを地図にしてきた歴史を、300点を超える図版でたどる。

目次

はしがき
1. 河川と海
2. 都市
3. 紛争と緊張
4. 地形
5. 経済
6. 科学
7. 人間の営み
8. いくつもの世界
9. 芸術と空想
参考文献/謝辞/著者紹介/図版出典

サンプル画像

地図の博物図鑑 サンプル画像①
地図の博物図鑑 サンプル画像②
地図の博物図鑑 サンプル画像③
地図の博物図鑑 サンプル画像④
地図の博物図鑑 サンプル画像⑤
地図の博物図鑑 サンプル画像⑥
地図の博物図鑑 サンプル画像⑦

本文特別公開

『地図の博物図鑑』の「はしがき」を、特別に公開します。どのように地図を発見し、追究したのか、どういった経緯でこれほどユニークな図鑑ができたのかを語っています。

はしがき

 脳は地図のためにある。視覚的な生き物である人間がものごとを理解するには、目に見えるようにすることが重要だ。だから人びとは昔から地図をつくり、発見したばかりの世界を紙(あるいは羊皮紙やディスプレイ)に描きだし、ほかの方法では表現しづらい物語を伝えてきた。地図は概念を説明し、伝達するための最高の手段だ。

 地図は私たちを魅了してやまない。良質な地図に心を奪われるのは、見た目の美しさ、おもしろさもさることながら、そこに遠い時代や場所がよみがえり、胸おどる物語が始まると感じるからだ。この本では、そんなとびきりの物語を秘めた地図の数々を紹介していこう。

 地図の最大の魅力は、ちがう時間と場所に連れていってくれるところだ。よく知っている町の昔の様子や、その想像図を眺める。まったく知らない場所もおもしろい。たとえば17世紀の日本で大名や侍が旅をした街道。18世紀初頭のハンガリーの銀山で、ランプの明かりを頼りにつるはしをふるっていた地下坑道もそうだ。

 地図は誰かの目を通して見た世界にほかならない。だから作成者の偏見や野心も反映されている。だから17世紀の海賊は南米の海岸線を克明に描き、冷戦時代のソ連軍は米国の主要都市を詳細な地図にした。

 地図は潜んでいた事実に光を当てる。1906年の大地震後に地質学者がつくったサンフランシスコの地図は、いくつもの新事実を明らかにしてそれまでの科学をくつがえした。さらにこの本では、火星表面に見える線は火星人がつくった運河だとか、コレラは空気の汚れが原因だといった、知識探究が空回りした奇妙な俗説を表現した地図も紹介する。

 地図は想像にはずみをつける。空想の世界を出現させ、(いまはまだ)存在しない場所を探検することも可能だ。ロンドンの速記者が20世紀はじめにつくった、都会と田舎の良いところどりをしたユートピアの地図もあれば、15世紀の医師が描いた黙示録の世界地図もある。

 探検したい、発見したい、美しいものを創造したい――そんな人間の衝動は、地図製作の歴史にも脈々と流れている。この本では、地形を紙上に記すために考案された画期的な手段や、独創的な手法についても紹介したい。

 本書は、地図好きなあなたの書棚にある本とは少々趣が異なる。私たち筆者はジャーナリストであり、地図製作やその歴史の専門家ではない。でも無類の地図好きで、地図についてもっと知りたいと思ってきた。そんな好奇心のおもむくままに、私たちは5年の歳月をかけて地図のコレクションを見てまわり、資料をあさり、快くインタビューに応じてくれた研究者、キュレーター、コレクター、地図製作者の話に耳を傾けた。

 その過程で出合ったのが、これまで顧みられなかった歴史的な地図、著名な地図の知られざる物語、息をのむ地図作品の数々だ。ナショナル ジオグラフィックのブログ「オール・オーバー・ザ・マップ」(英語)でも一部書いてきたが、大部分は本書が初めての紹介になる。

 私たちは博物館、一流大学、有名コレクションだけでなく、地味なところからも地図を見つけだした。政府報告書、忘れられた科学論文、個人所蔵、図書館のほこりだらけの片隅……。人気テレビドラマシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』のように、大衆文化から派生した地図もあれば、飛行機の座席のポケットに入っていたり、スキー場でもらってとりあえずポケットに入れておくような地図もある。

 地図の定義はかなり広くしたが、なかにはそこからもはみだす地図がある。脳内の神経接続を表現した美しい図や、映画『スター・ウォーズ』シリーズの宇宙要塞デス・スターの詳細な図解がそうだ。

 この本は各章に基本テーマが設けてあるが、地図の世界を体系的に総覧するものではない。かわりに豊かな歴史と現在の隆盛、実用から変わり種まで、地図製作の多様な世界を描きだそうとしている。いわば地図好きが地図好き(自覚がない人も含めて)のために書いた本だ。豊富な図版をまじえて語られる、地図とその製作者の真実の物語を楽しんでいただきたい。

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