Photo Stories 撮影ストーリー

【2月25日】気候変動との競争(ブラジルとガイアナの国境)/ギアナ高地にある卓状台地に挑むアレックス・オノルド。数百万年に及ぶ浸食作用が隔絶された地形をつくり出し、生き物たちが独自の進化を遂げた。気候変動とカエルツボカビが世界中の両生類を脅かすなか、爬虫(はちゅう)両生類学者でナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーでもあるブルース・ミーンズは、オノルドらの協力を得ながら、新種の調査をしている。この地域の両生類が姿を消してしまう前に、彼らがいかにして生態系に適応してきたのかを解明するためだ。(写真 = レナン・オズターク)
【写真が記録した2021】 保護・保全
2021.12.28
2021年は難題が続出した年だった。だが、自然遺産や文化遺産の保全に関する明るい成果もあった。希少な生物を救い、海洋を保護し、過去をたたえようとする努力に、私たちの希望や人間性が反映されていた。
暗い1年を照らす光
保護・保全活動における成功例には、この世界の過去、現在、未来を大切にする心が表れている。
* * * * *
16頭からなるアジアゾウの群れが北上し始めたとき、誰も彼らの目的地やその理由を知らなかったし、気に留める人もいなかった。中国南西部の雲南省にあるシーサンパンナ国立自然保護区のゾウは、たまに境界を越えることはあっても必ず戻ってきたからだ。だが、今回は違った。群れは16カ月にわたって農作物を荒らしたり、泥浴びをしたりしながら省都の昆明に向けて500キロも北上したのだ。群れは世界中の注目を集め、政府当局は難題に直面することとなる。ゾウたちがもたらす損害額は5000万円を超え、見物人が襲われる心配もあった。
鎮静剤を打って保護区に移送すれば、容易に解決しそうなものだが、3頭の子がいる群れにとって、この方法は危険だった。そこで当局は緊急対策チームを組織し、ゾウと人間の安全確保に乗り出す。ドローンで群れの動きを追跡し、大量のトウモロコシやパイナップル、バナナを使ってゾウを町から遠ざけ、電気柵やバリケードを設置して安全なルートへ誘導した。こうした対策に、膨大な人員と経費が投じられた。
気候変動や紛争、新型コロナウイルス感染症に見舞われるなかで、ゾウの群れを守るためだけに、これほどの資源を費やすのは無駄だという意見もあるだろう。だが、自然や文化の保全は、病気の治癒や戦争の終結と同様、良い世界を育むことへつながる。私たちは健康や平和を必要とするのと同じように、野生生物や古代の遺物を必要としている。それらは私たちの生活の背景となり、自らの歴史を理解する一助となる。私たち人類の過去、現在、未来そのものなのだ。
ケニア サンブル国立保護区
”チーターは大型ネコ科動物のいじめっ子ではありません。喉を鳴らすだけで、ほえたりはしない。激しい戦いや、縄張り争いをするような強い体ではないのです”
̶ニコール・ソベキ(写真家)
イエメン マーリブ
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