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フランスのジベルニーにあるモネの家と庭園は、この印象派画家が丹精こめて整備した。緑豊かな庭では、春から10月まで花が咲き乱れる。(PHOTOGRAPH BY MUSTAFA YALCIN, ANADOLU AGENCY / GETTY IMAGES)

観光地から足を延ばして訪れたい、ヨーロッパ魅惑の小さな村 7選

2022.06.26
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 新型コロナがもたらした旅行制限が緩和され始め、ヨーロッパへの旅行熱が高まっている。「ヨーロッパ便の予約は増え続けています。ヨーロッパ旅行委員会が最近公表したアンケートによると、回答者の88%が、2022年の夏にヨーロッパ旅行を予約するつもりだといいます」と、オランダ政府観光局の北米担当者、アントニア・コエディク氏は話す。

 一方で、ヨーロッパの人気観光都市は観光客の殺到を警戒している。イタリアのベネチアは最近、大型クルーズ船の乗り入れを禁止した。オランダのアムステルダムでは、バチェラーパーティー(独身最後の夜を楽しむ男性たちのパーティー)が人気だが、あまりにも人が集まるので規制に乗り出している。こうした取り組みが、新たな戦略を生み出した。(参考記事:「観光客の波がベネチアを台無しにする?」

「オランダは小さな国ですから、アムステルダムを訪れたら、他のさまざまな町や地域にも気軽に足を運ぶことができます。その点に気づいてもらいたいのです」と、コエディク氏は言う。この戦略は効果を上げているようだ。「ここ数年は、主要都市と小さな町を組み合わせた旅に、米国人旅行者の関心が高まっています」

 こうした関心は、小さな村の魅力を知る経験豊かな旅行者たちには、すでに定着している。フードマーケットや一風変わったフェスティバル、芸術家の心をとらえる小さな村など、ヨーロッパへのあこがれをかき立てる7つの村を紹介しよう。

オランダのヒートホールンでは、かやぶき屋根の住宅や木造の橋をボートツアーで楽しむことができる。車がほとんど通行できないこの村では、泥炭採掘のために築かれた水路を巡るのが最適だ。(PHOTOGRAPH BY NICK FOX, ALAMY STOCK PHOTO)
オランダのヒートホールンでは、かやぶき屋根の住宅や木造の橋をボートツアーで楽しむことができる。車がほとんど通行できないこの村では、泥炭採掘のために築かれた水路を巡るのが最適だ。(PHOTOGRAPH BY NICK FOX, ALAMY STOCK PHOTO)

ヒートホールン(オランダ)

旅のヒント:「オランダのベネチア」でのんびりと水路巡りを

 オランダ北東部、アムステルダムから約120キロの位置にあるヒートホールンは、「北のベネチア」として知られている。この地域では泥炭(ピート)採掘が盛んだったので、村では泥炭を運ぶ水路が発達した。かやぶき屋根の住宅がある島々は170以上の小さな木造の橋で結ばれている。村には道路が少ないため、村とこうした家々のたたずまいを楽しむには、ボートを利用するのが一番だ。

 モーターボートをレンタルすることもできるが、カップルでゆっくり楽しみたいなら、船頭を頼むという手もある。長い平底船を竿(さお)で巧みに操って、村の水路を巡ってくれるだろう。

 撮影スポットとして最適な水路は、ビネンパッドだ。趣きのある家々と橋、そして水面に日差しが降り注ぐ風景に、きっと心を奪われるだろう。ビネンパッドやそのほかの水路沿いにはレストランが並び、テラスでくつろぎながら昼食を楽しめる。(参考記事:「車では入れない オランダの可愛らしい水の村」

英国のハワースには、ブロンテ博物館がある。この博物館は、「ジェーン・エア」や「嵐が丘」などの名作を残したブロンテ姉妹の旧居だ。(PHOTOGRAPH BY IAN DAGNALL COMMERCIAL COLLECTION, ALAMY STOCK PHOTO)
英国のハワースには、ブロンテ博物館がある。この博物館は、「ジェーン・エア」や「嵐が丘」などの名作を残したブロンテ姉妹の旧居だ。(PHOTOGRAPH BY IAN DAGNALL COMMERCIAL COLLECTION, ALAMY STOCK PHOTO)

ハワース(英国)

旅のヒント:恋愛小説に目がない、本好きのあなたに

 英国のハワースは、一見したところ、他のヨークシャー州の村々と変わりがない。だが、村の目抜き通りの急坂を登りつめると、ブロンテ博物館(旧牧師館)がある。ここは、シャーロット、エミリー、アンのブロンテ姉妹が暮らし、小説を執筆した家だ。

 ブロンテ姉妹が幼い頃に作ったミニチュア本のひとつが、毎年、公開されている。学芸員のアン・ディンスデール氏は、「ミニチュア本には、散文や詩、批評文が書かれています」と話す。「とても文字が小さいので、拡大鏡がなければ読めないでしょう。小さい文字で書くことで、姉妹たちだけの秘密の本になったのです」

 また、ブロンテ姉妹が執筆に使用した食卓も公開されている。「毎晩、ブロンテ姉妹は食卓のまわりを歩きながら、原稿を読み上げたり、小説の構想を話し合ったりしたことでしょう」と、ディンスデール氏は説明する。この部屋の閉ざされた雰囲気と、小さな食卓の周囲を歩き回る三姉妹の情景からは、姉妹が周囲に広がる湿地ムーアに寄せた愛情が強く感じられる。ブロンテ姉妹は、ムーアから豊かなインスピレーションを得ていた。エミリーが書いた印象深い古典的恋愛小説『嵐が丘』もそのひとつだ。

 喫茶店もパブも灰色の石造りの建物で統一されたハワースには、キースリー&ワースバレー鉄道の駅もあり、昔ながらの蒸気機関車が牧歌的な村々に乗客を運んでいる。

ジベルニーにあるクロード・モネの睡蓮の池は、モネの多くの作品のモチーフになった。この庭は、睡蓮が咲く夏に訪れるといいだろう。(PHOTOGRAPH BY TRAVELLINGLIGHT, ALAMY STOCK PHOTO)
ジベルニーにあるクロード・モネの睡蓮の池は、モネの多くの作品のモチーフになった。この庭は、睡蓮が咲く夏に訪れるといいだろう。(PHOTOGRAPH BY TRAVELLINGLIGHT, ALAMY STOCK PHOTO)

ジベルニー(フランス)

旅のヒント:緑豊かな庭園とフランス印象派への賛歌

 芸術家の中には、身近な環境からインスピレーションを得る人もいる。だが、クロード・モネほど、創作環境を丹精こめて整備した画家はいないだろう。パリから北西に約70キロ、ノルマンディー地方の川沿いの閑静な村、ジベルニーに、モネは40年以上も暮らしていた。ここは、モネにとって家であり、制作の題材であり、造園術を駆使して作りあげた景観だった。

 モネが愛した睡蓮の池は、岸辺にシダレヤナギが並び、アーチ型をした緑色の橋が印象的だ。モネは、250点を超える油絵作品に睡蓮を描き、睡蓮に不朽の名声をもたらした。フランス印象派のファンなら、モネの家と庭を訪れ、近くのジベルニー印象派美術館にも足を運んでみよう。(参考記事:「美しき廃墟やモネの足跡を訪ねて、パリから海へのサイクリングロード」

次ページ:クラーデスホルメン(スウェーデン)、ルールマラン(フランス)、テルチ(チェコ)

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