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エルサレム旧市街は国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産に登録されており、神殿の丘や聖墳墓教会などがある。(PHOTOGRAPH BY SALLYLIVERSAGE—FOTOLIA/ADOBE STOCK)

謎に包まれたイエス・キリストの最期の日々 写真と画像16点

2022.04.18
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 キリスト教において、パーム・サンデー(復活祭直前の日曜日)からイースターまでの1週間は、最も神聖な期間の一つとされる。復活祭と言われるように、イースターは処刑されたイエス・キリストの3日目の復活を記念する祝祭だ。しかし、イエスがいつ、どこで亡くなったかについては議論が続いている。

 エルサレムに入城したイエスは、ローマ帝国のユダヤ属州総督ポンテオ・ピラトの前で行われた裁判を経て、受難に至る。聖書学者や歴史家は、この裁判が行われた正確な時期や場所を特定しようと、現存する記録に目を通してきた。それでも、決定的な答えはまだ見つかっていない。(参考記事:「イエス・キリストとはどんな人物だったのか?」

石灰岩でできた西の壁は嘆きの壁として知られ、第二神殿の遊歩道を支える壁の一部だった。(PHOTOGRAPH BY ANDREYKR—FOTOLIA/ADOBE STOCK)
石灰岩でできた西の壁は嘆きの壁として知られ、第二神殿の遊歩道を支える壁の一部だった。(PHOTOGRAPH BY ANDREYKR—FOTOLIA/ADOBE STOCK)

裏切りと逮捕

 聖書では、過越(すぎこし)祭の祝宴(最後の晩餐)の後、使徒ユダがイエスを裏切り、イエスがオリーブ山にあるゲッセマネの園に身を隠していることを明かしてしまう。神殿警備隊はそこでイエスを発見し、過越祭の前夜に神殿を騒がせた罪で逮捕する。イエスはその後、ユダヤ教の大祭司カイアファの私邸に連行され、尋問を受ける。(参考記事:「古代イスラエルの宗教を守る、サマリア人の過越の祭り 写真9点」

カラヴァッジョの影響を受けたオランダ人画家ヘリット・ファン・ホントホルストは、1617年頃に『カイアファの前のキリスト』を描いた。(PHOTOGRAPH BY PANTHEON STUDIOS, INC.)
カラヴァッジョの影響を受けたオランダ人画家ヘリット・ファン・ホントホルストは、1617年頃に『カイアファの前のキリスト』を描いた。(PHOTOGRAPH BY PANTHEON STUDIOS, INC.)

 カイアファは、特定の議員、特にファリサイ派(ユダヤ教の一派で、イエスの支持者もいた)がイエスを弁護するのを避けるために、わざと非公開で起訴しようとした可能性がある。多くの学者は、大祭司には死を命じる権限はなかったと主張する。従って、唯一の解決策は、地元のローマ当局に照会し、イエスをピラトの前に連れて行くことだった。そこでカイアファは、死刑の宣告を正当化するような罪状を持ち出す必要があった。

 尋問の際、カイアファはイエスに直接、「お前は救世主なのか?」と尋ねた。マルコによれば、イエスは「そうです」と答え、旧約聖書の詩篇とダニエル書を引用した。「あなたたちは人の子が『力』の右に座り、『天の雲とともに来る』のを見るであろう」(詩篇110:1、ダニエル7:13、マルコ14:61-62)。

ルネサンス期の画家アンドレア・マンテーニャ(およそ1431〜1506年)が1460年頃に描いた『庭の苦悶』は、3人の使徒が眠り、ローマ軍が近づく中、祈るイエスを描いている。(PHOTOGRAPH BY PANTHEON STUDIOS, INC.)
ルネサンス期の画家アンドレア・マンテーニャ(およそ1431〜1506年)が1460年頃に描いた『庭の苦悶』は、3人の使徒が眠り、ローマ軍が近づく中、祈るイエスを描いている。(PHOTOGRAPH BY PANTHEON STUDIOS, INC.)
1602年頃に描かれたカラヴァッジョの『キリストの奪取』で、イエスにキスをするユダ。(PHOTOGRAPH BY LAWRENCE STEIGRAD FINE ARTS, NEW YORK / BRIDGEMAN IMAGES)
1602年頃に描かれたカラヴァッジョの『キリストの奪取』で、イエスにキスをするユダ。(PHOTOGRAPH BY LAWRENCE STEIGRAD FINE ARTS, NEW YORK / BRIDGEMAN IMAGES)

 イエスはこの言葉によって、ローマ軍を巻き込む完璧な口実をカイアファに与えてしまった。イエスは聖書から引用しただけだが、大祭司は、「力」とか「天の雲とともに来る」といった言葉がローマ人にとって非常に異なった意味を持つことを知っていた。

裁判は数日後か数週間後か

 ピラトが主宰した裁判がいつ行われたかを正確に特定するのは難しい。マルコによる福音書では、カイアファによる尋問の直後に行われたとされている。「朝になってすぐ、彼らはイエスを縛って連れて行き、ピラトに引き渡し」、ピラトは尋問を始めた(マルコ15:1)。

オリーブ山のゲッセマネの園があったのは、神殿の丘の近くだとされてきた。(PHOTOGRAPH BY PANTHEON STUDIOS, INC.)
オリーブ山のゲッセマネの園があったのは、神殿の丘の近くだとされてきた。(PHOTOGRAPH BY PANTHEON STUDIOS, INC.)

 福音記者マルコを含め、古代の書き手は物語のまとまりを維持するために、出来事を短い時間枠に圧縮することが多かった。受難がわずか数日で起こったという考え方は、初期のキリスト教徒にとって魅力的だった。一連の出来事を「聖なる1週間」で記念できるからだ。だが、実際にはもっと長い時間をかけて起こったことだと考える学者もいる。

次ページ:告発者と裁判官

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