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1872年、イエローストーン国立公園は、連邦議会によって米国初の国立公園に指定された。写真は、園内の大峡谷「グランドキャニオン・オブ・イエローストーン」。(PHOTOGRAPH BY MICHAEL NICHOLS)
「米国のワンダーランド」と呼ばれ、親しまれてきたイエローストーン国立公園。米国初、ひいては世界初の国立公園に指定されてから、今年で150年となる。
面積およそ8990平方キロメートルの園内には、森や湖、山、渓谷、峡谷の雄大で多様なパノラマが広がり、何世代にもわたって多くの旅行者たちを魅了してきた。公園とその周辺地域の自然は約90%が手つかずで、北半球の温帯地域としては珍しく、広大な生態系が今も損なわれることなく残っている。(参考記事:「イエローストーン 自然保護の実験場」)
イエローストーンは「国民の利益と楽しみのため」に、1872年に国立公園に指定された。公園を中心として、その周囲には、いくつもの公有地が複雑につなぎ合わされた「グレーター・イエローストーン生態系」が広がる。全ての土地を合わせると、面積は公園の10倍近くに及ぶ。(参考記事:「米国立公園が20年にわたり謎の上下動、新たな仮説」)
イエローストーンの息をのむような絶景は、6600万年前の火山活動によって形づくられた。園内にある3つのカルデラは、それぞれ210万年前、130万年前、64万年前の噴火で誕生した。園内には、ふつふつと煮えたぎる温泉や間欠泉など、1万を超える熱水現象が見られる。とくに間欠泉は、世界中の間欠泉をすべて合わせたよりも多い数が、ここイエローストーンに集中している。
米国先住民は、更新世の氷床が解けた後、この地に到達した。以来1万1000年以上にわたって、ブラックフィート族やカユース族、クーダレン族、ショショーニ族、ネ・ペルセ族などが、土地の資源を食物、住居、医薬、宗教儀式のために利用してきた。
イエローストーン公園の内外には、彼らの歴史を示す矢じりや岩絵、象形文字、住居跡などが残されており、現代の先住民たちはその保全のために精力的に活動している。
ナショナル ジオグラフィックの膨大な写真アーカイブには、イエローストーンが国立公園に指定される1年前の1871年に実施された地質調査の写真が含まれている。撮影者は、ウィリアム・ヘンリー・ジャクソンという写真家だ。ナショナル ジオグラフィック誌初のイエローストーン特集記事は、今から100年以上前の1908年5月号に掲載された。それ以来、本誌は記事や旅行記、本、地図など、様々な形でイエローストーン国立公園を取り上げてきた。
「初期の頃の写真は、自然の雄大さ、生物の豊かさ、地球の偉大な力を感じさせるものが多く、そこに写り込む人間は、小さな点のようにしか見えませんでした」と、ナショナル ジオグラフィック写真コレクション編集者のジュリア・アンドリュースは言う。「ところが、最近の写真は正反対で、人間が自然に与える影響に対して、生態系がいかに脆弱であるかを訴えるものが多いです」
ここでは、ナショナル ジオグラフィックの写真アーカイブから、特に印象深いイエローストーン国立公園の写真を厳選して紹介する。どの写真も、過去の写真家の視点を知ることができるだけでなく、時代を超えて伝わってくるインスピレーションや喜び、この魅力あふれる国立公園を旅することによって得られる大切なことを教えてくれる。