Photo Stories 撮影ストーリー

【6月21日】地方の隅々までワクチンを届ける(インド トサマイダン)/カシミール地方の都市スリーナガルの南西に位置するトサマイダンの牧草地で、ナジル・アーメドが羊飼いや遊牧民を探す。手に提げているのは新型コロナワクチンの入った保冷ボックスだ。ウイルスの拡大を食い止めるため、医療従事者は辺境の村にも入る。アーメドは6人の同僚とスリーナガルから車で3 時間走り、さらに徒歩でここまでやって来た。彼らは4時間歩き回り、10人以上にワクチンを接種できた。(写真 = ダール・ヤシン、AP PHOTO)

【写真が記録した2021】 コロナ禍

2021.12.28

2021年はパンデミックに振り回された1年だった。ワクチン接種が始まり、経済活動を再開できるとの期待が高まったが、接種は思うように進まなかった。以前の日常生活が戻りつつあるとはいえ、ウイルスの脅威はいまだ続いている。

この記事は雑誌ナショナル ジオグラフィック日本版2022年1月号に掲載された特集です。定期購読者の方のみすべてお読みいただけます。

失われた機会

 新型コロナウイルスの変異株の出現とワクチン対応のばらつきが日常生活の回復を遅らせている。

 * * * * *

 2021年は新型コロナウイルス感染症を克服した勝利の年になると思われた。驚異的な速さでワクチンが完成すると、史上類を見ない全世界規模の接種が始まった。ロックダウン、ソーシャルディスタンス、マスク着用といった光景は過去のものとなり、国境が開かれ、家族が再会し、経済が息を吹き返して、日常生活が戻るとの期待が高まった。

 そのワクチン接種がつまずくとは、誰も予想していなかった。米国では、冬と夏に感染者が急増したにもかかわらず、数百万人が接種を受けなかった。研究が進むにつれてこの感染症への対応が変わっていったために、疑念がふくらんだのだ。誤情報と怪しげな噂がウイルス並みの速さで広がる。ワクチンは政府の統制手段であり、マスク着用を強いるのは自由の侵害だと声を上げる人たちもいた。その一方で、世界の多くの地域ではワクチンの入手すらできなかった。

<span style="font-size: 15px;">5月8日 復活した通過儀礼</span><br><span style="font-weight: bold; color: #777;">米国 ワシントン</span>
5月8日 復活した通過儀礼
米国 ワシントン
ハワード大学の友愛会に所属する学生は、陽気に踊りながら行進するのが半世紀前から続く卒業の儀式だ。2021年度に演劇科を卒業したトラビス・エグゼイビア・ブラウン(一番右)は、通行人が「足を止めて見物してくれるよ。昔からの伝統だって知っているからね。通過儀礼のようなもの」と話す。コロナ禍で講義はオンラインになったが、感染者数が減ってきたことで、大学は2020年度と21年度の卒業式を合同で開催した。(写真 = ジャレド・ソアレス)

”仲間たちと行進して、ハワードでの大学生活を締めくくることができた”
̶トラビス・エグゼイビア・ブラウン(ハワード大学卒業生)
<span style="font-size: 15px;">7月21日 犠牲者を弔う</span><br><span style="font-weight: bold; color: #777;">インドネシア 北ジャカルタ</span>
7月21日 犠牲者を弔う
インドネシア 北ジャカルタ
北ジャカルタ市のシリンシンにあるロロタン公営墓地で、新型コロナの犠牲者の墓にバラ水をかけ、花を供える親族。3月に新設されたこの墓地は7200人分の区画があったが、7月に死者が急増してすぐに埋まり始めた。世界第4位の人口を抱えるインドネシアでは、ピーク時には1日平均5万人の新規感染者が出た。(写真 = ムハンマド・ファドリ)

”このウイルスがどのように広がり、いかに危険なのかを皆わかっていないのです”
̶イルマ・ヒダヤナ(インドネシアで新型コロナのデータを収集する団体LaporCovid-19の共同創設者)
<span style="font-size: 15px;">7月19日 厳しい制限が流れを変えた</span><br><span style="font-weight: bold; color: #777;">台湾 台北</span>
7月19日 厳しい制限が流れを変えた
台湾 台北
近郊の三重区から台北に入る通勤者のスクーターが橋を埋め尽くす。5月から7月にかけて起きたアルファ株の流行で人々は恐怖におびえたが、厳格な隔離方針と接触者追跡の徹底が奏功して、新規感染を抑え込むことに成功した。台湾の累計感染者数は米国の190分の1以下だ。(写真 = 林亦非(ラム・イク・フェイ))

”市民は日常生活を何とか維持しようと懸命に努力しています”
̶林亦非( 写真家)

次ページ:広がり始めた変異株

ここから先は、「ナショナル ジオグラフィック日本版」の定期購読者(月ぎめ/年間のみ、ご利用いただけます。

定期購読者(月ぎめ/年間)であれば、

  • 1 最新号に加えて2013年3月号以降のバックナンバーをいつでも読める
  • 2ナショジオ日本版サイトの
    限定記事を、すべて読める

おすすめ関連書籍

2022年1月号

写真が記録した2021:辛抱の日々/コロナ禍/気候変動/対立・紛争/保護・保全

気候変動、紛争、コロナ禍、そして私たちに勇気をくれる保護活動。2021年に撮影され、ナショナル ジオグラフィックのアーカイブに加わった膨大な写真から、この1年の出来事を振り返ります。

定価:1,210円(税込)

Photo Stories 一覧へ