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ベルーガは遊び好きで好奇心旺盛だ。サマセット島沖では、石を拾って仲間に与えたり、海藻を頭に乗せて、気取って泳いだりする。クジラやイルカのなかには、独自の方言や習性をもつ集団が存在することがわかってきた。それは、人間のように文化をもっている証しなのだろうか。(2021年5月号特集「私たちが知らない「クジラの世界」」より)(PHOTOGRAPH BY BRIAN SKERRY)

ナショナル ジオグラフィックが掲載したベスト動物写真 2021年版

2021.12.13
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 家族に囲まれ、水中を滑るように泳ぐベルーガ(シロイルカ)の子。口にくわえた平たい石は、仲間同士でパスを回して遊ぶためのおもちゃだ。

 ベルーガは複雑な社会構造を持っていると考えられている。彼らは互いに泳ぐルートを教え合い、個別の鳴き声を使い(おそらく自分がだれかを知らせるためだ)、じゃれ合いながら尾びれを振り、海底に体をこすりつけて不要になった皮膚をそぎ落とす。クジラの仲間たちが持つ文化の奥深さについて、私たちはまだ理解し始めたばかりだ。

 写真家のブライアン・スケリー氏が撮影した若いベルーガの写真は、彼らが遊んでいる様子を初めてとらえたものだ。この記事では、ナショナル ジオグラフィックが2021年に掲載した何千枚もの写真から、編集部が選んだ28枚の傑作動物写真を紹介する。その一枚一枚が伝える物語を味わってほしい。

 人間の世界は今年もパンデミックの影響から抜け出せなかったが、野生動物たちの世界では、そうした混乱とは無縁の、驚くべき自然の営みも続けられていた。エドゥアルド・フロリン・ニガ氏が撮影した小さなアリたちの顔のポートレート集は、細部に至るその多様性を写し出している。ジェニファー・ヘイズ氏とデビッド・デュビレ氏は、われわれを夜の大海原に連れ出し、漆黒の闇の中で輝きを放つ魚たちを見せてくれた。これらの写真が描く生命の美しさと複雑さは、人間の世界にとらわれがちな私たちに、安らぎを与えてくれる。

夜の海を安全に移動するため、生き物たちは意外な協力関係を築くことがある。この若いムナグロアジは後ろで身を隠しながら、クラゲをモーターボートのように操っている。捕食者から守ってもらう代わりに、クラゲに付いた寄生虫を食べるのだろう。「目にするほとんどすべての光景に魅了されます」とヘイズは話す。(<u><a href="/atcl/news/21/091600456/" target="_blank">2021年10月号「夜の海に漂う生命」より</a></u>)(PHOTOGRAPH BY JENNIFER HAYES AND DAVID DOUBILET)
夜の海を安全に移動するため、生き物たちは意外な協力関係を築くことがある。この若いムナグロアジは後ろで身を隠しながら、クラゲをモーターボートのように操っている。捕食者から守ってもらう代わりに、クラゲに付いた寄生虫を食べるのだろう。「目にするほとんどすべての光景に魅了されます」とヘイズは話す。(2021年10月号「夜の海に漂う生命」より)(PHOTOGRAPH BY JENNIFER HAYES AND DAVID DOUBILET)
ヘイズがインドネシア沖で撮影した若いコンゴウフグ。デュビレは潮の流れに身を任せる夜のダイビングを、宇宙遊泳にたとえる。「どの方向が上かを知るには、空気の泡が上っていく方向を見るしかないんです」(<u><a href="/atcl/news/21/091600456/" target="_blank">2021年10月号「夜の海に漂う生命」より</a></u>)(PHOTOGRAPH BY JENNIFER HAYES AND DAVID DOUBILET)
ヘイズがインドネシア沖で撮影した若いコンゴウフグ。デュビレは潮の流れに身を任せる夜のダイビングを、宇宙遊泳にたとえる。「どの方向が上かを知るには、空気の泡が上っていく方向を見るしかないんです」(2021年10月号「夜の海に漂う生命」より)(PHOTOGRAPH BY JENNIFER HAYES AND DAVID DOUBILET)

 しかし、人間がもたらす悪影響も忘れてはならない。ナショジオの写真家たちが撮影した力強い写真の中にも、人間による脅威が底を流れている。トマス・ペシャック氏が、アフリカのカラハリ砂漠で撮影したミーアキャットとセンザンコウの姿は、気候変動の影響と彼らの脆弱性を浮き彫りにする。メラニー・ウェンガー氏は、南アフリカ、サイモンズタウンの好奇心旺盛なケープペンギンを撮影しているが、この種は現在、シロサイ以上に危険な状態にあり、15年以内に絶滅する可能性がある。

 このほか、動物を助ける人たちに焦点を当てた写真もある。ブレント・スタートン氏が撮影した、瀕死のゴリラを抱きかかえる飼育員や、親を亡くしたチンパンジーを保護区に空輸するパイロットの写真、また、ニコール・ソベッキ氏による、ペット取引から救出されたチーターの子の写真には、暴力の犠牲となった動物たちと、彼らが受けたひどい傷を癒やそうとする人間の姿が記録されている。

2021年9月、飼育員であるアンドレ・バウマ氏の腕の中で息を引き取った、メスの孤児のマウンテンゴリラ、ンダカシ。殺害事件で母ゴリラを失って以来、ンダカシはバウマ氏と14年にわたる絆を深めてきた。(<u><a href="/atcl/photo/stories/21/101200062/" target="_blank">2021年10月「殺害事件で親を失ったゴリラ「ンダカシ」逝く、飼育員に愛された14年 写真9点」より</a></u>)(Photograph by Brent Stirton)
2021年9月、飼育員であるアンドレ・バウマ氏の腕の中で息を引き取った、メスの孤児のマウンテンゴリラ、ンダカシ。殺害事件で母ゴリラを失って以来、ンダカシはバウマ氏と14年にわたる絆を深めてきた。(2021年10月「殺害事件で親を失ったゴリラ「ンダカシ」逝く、飼育員に愛された14年 写真9点」より)(Photograph by Brent Stirton)

 これらの写真に顕著に見られるテーマは人間と野生とのつながりだと、今回の写真を選定したナショナル ジオグラフィックの写真副編集長キャシー・モランは言う。「ナショジオの写真家たちは、自分が伝えようとするストーリーに深い関心を寄せ、だれも見たことがないような写真をものにするために、また自然界の姿や、人間が注意を払うべきさまざまなものごとを伝えるために、多大な努力を惜しみません」

 今月、ナショジオでの仕事を引退するモランは、その40年のキャリアの間に、野生動物のフォトジャーナリズムがどのように変化してきたかを振り返ってみせる。「この仕事を始めたときには、記事になるのは動物のストーリーばかりでした。つまり純然たる野生動物、純然たる自然です」。野生の生き物たちのすばらしさを称える写真こそが、長年にわたって、ナショジオが野生動物のストーリーを伝えるやり方だった。

「そうした喜びや魅力が必要な場面は常にあります」とモランは言う。「しかし次第に明らかになってきたのは、それだけに焦点を当てるのでは、ストーリーの半分も伝えられないということでした」

米国フロリダ州南西部のフロリダパンサー国立野生生物保護区で、雄のパンサーが小川を跳び越える。種全体で200頭ほどしかいないが、生息地を回復しつつある。ただ、住宅地の拡大で生息環境が脅かされてもいる。(<u><a href="/atcl/news/21/031700128/" target="_blank">2021年4月号特集「フロリダパンサーは復活するか?」より</a></u>)(PHOTOGRAPH BY CARLTON WARD JR.)
米国フロリダ州南西部のフロリダパンサー国立野生生物保護区で、雄のパンサーが小川を跳び越える。種全体で200頭ほどしかいないが、生息地を回復しつつある。ただ、住宅地の拡大で生息環境が脅かされてもいる。(2021年4月号特集「フロリダパンサーは復活するか?」より)(PHOTOGRAPH BY CARLTON WARD JR.)

 ナショナル ジオグラフィックの野生動物フォトジャーナリズムはその後、単にある動物がなぜ魅力的なのかということにとどまらず、その動物が直面している問題にまで注目するよう進化してきた。ナショジオの写真家たちの仕事の重要性は、「動物たちのために、そして私たちのために、どうやってこの先に進む道を見出していくのか」という問いかけによって浮き彫りになると、モランは言う。

「ストーリーを伝えるということが、自分にとってどんどん重要性を増していきました。私がつくづく感じたのは、自然を伝えるどんなにすばらしい写真であろうとも、その動物がさまざまな脅威にさらされていて、われわれがその事実を示さないのであれば、何の意味もないということです」

マンドゥリアクアマガエルモドキ(Nymphargus manduriacu)は数年前に新種として報告されたばかり。小さな昆虫やクモが近づくのを待って、奇襲をかけるハンターだ。(<u><a href="/atcl/news/21/071600361/" target="_blank">2021年8月号特集「おなかの中まで見えてます、半透明のカエルたち」より</a></u>)(PHOTOGRAPH BY JAIME CULEBRAS)
マンドゥリアクアマガエルモドキ(Nymphargus manduriacu)は数年前に新種として報告されたばかり。小さな昆虫やクモが近づくのを待って、奇襲をかけるハンターだ。(2021年8月号特集「おなかの中まで見えてます、半透明のカエルたち」より)(PHOTOGRAPH BY JAIME CULEBRAS)
エクアドルのアンデス山脈東部だけに生息するワイリーアマガエルモドキ(Nymphargus wileyi)の卵塊がシダの葉先から垂れ下がる。オタマジャクシになると下を流れる小川に落ち、成長を続ける。(<u><a href="/atcl/news/21/071600361/" target="_blank">2021年8月号特集「おなかの中まで見えてます、半透明のカエルたち」より</a></u>)(PHOTOGRAPH BY JAIME CULEBRAS)
エクアドルのアンデス山脈東部だけに生息するワイリーアマガエルモドキ(Nymphargus wileyi)の卵塊がシダの葉先から垂れ下がる。オタマジャクシになると下を流れる小川に落ち、成長を続ける。(2021年8月号特集「おなかの中まで見えてます、半透明のカエルたち」より)(PHOTOGRAPH BY JAIME CULEBRAS)
親を亡くしたゾウを保護するケニア北部の「レテティ・エレファント・サンクチュアリ」。子ゾウたちは約3時間ごとにボトルに入った調合乳をもらう。かつては輸入された人間の乳児用ミルクを与えられていたが、パンデミックの影響で入手が困難になったことから、施設のスタッフが、より安価で持続可能性が高く、調達が容易な地元のヤギの乳から作ったものに切り替えた。このミルクのおかげで、ゾウたちは元気いっぱいに暮らしている。(Photograph by Ami Vitale)
親を亡くしたゾウを保護するケニア北部の「レテティ・エレファント・サンクチュアリ」。子ゾウたちは約3時間ごとにボトルに入った調合乳をもらう。かつては輸入された人間の乳児用ミルクを与えられていたが、パンデミックの影響で入手が困難になったことから、施設のスタッフが、より安価で持続可能性が高く、調達が容易な地元のヤギの乳から作ったものに切り替えた。このミルクのおかげで、ゾウたちは元気いっぱいに暮らしている。(Photograph by Ami Vitale)

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