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カリフォルニア州、ノースレイクタホ消防地区のステファニー・ロックハート氏(28歳)。2021年8月29日、森林火災「カルドアファイア」がシエラネバダ山脈近くの峡谷で猛威を振るう中、タホ湖畔のロッジで家屋やシェルターを守る作業にあたっている。当局によると、カルドアファイアは2021年8月14日に発生。10月19日の時点で、火災は98%封じ込められたものの、およそ900平方キロメートルが焼失した。(Photograph by Lynsey Addario)
米国カリフォルニア州で頻発する森林火災に立ち向かう女性消防士たちの姿をナショナル ジオグラフィックの写真家リンジー・アダリオがとらえた。(参考記事:「ナショジオの女性写真家たち」)
10歳のとき、メグラン・エンズ氏は、自分の寝室の壁をポスターやステッカー、雑誌の切り抜きなど、米軍に関係するありとあらゆるもので飾っていた。女性が参加することが「一大事」になる世界に、すぐにでも加わりたくてたまらなかった。
そんなある日、カリフォルニア州ホリスターの牧場内にある祖父母の家で火事があった。エンズ氏と両親が到着するころには、消火はすでに終わっていた。消防隊員の中に、ひとりの女性がいた。すすにまみれ、頭にはヘルメットと呼吸器をかぶった彼女の手には、手斧とハリガンツール(ドアなどをこじ開ける道具)が握られていた。エンズはすっかり驚いてしまった。
「それ、あなたがやらせてもらえるの?」
幼いエンズ氏は、近づいてくる女性消防士にそう尋ねた。
「ほんとに消防士? 女性消防士なの?」
「そうだよ」
相手がそう答えたのを、エンズ氏は覚えている。
「いつかあなたも、消防士になろうかなって思ってくれるとうれしいな。消防隊にはもっとたくさん女性が必要だからね」
その言葉で、名も知らぬ女性はエンズ氏の心に種を植え付け、軍隊に入るという彼女の計画を狂わせてしまった。エンズ氏は現在、CAL FIRE(カルファイア:カリフォルニア州森林保護防火局)に所属し、3度目の森林火災シーズンを迎えている。(参考記事:「現場に突入、消防士だから撮れた山火事の内側 写真18点」)
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