Photo Stories撮影ストーリー

東南アジアへ移住した中国人にルーツを持つ文化グループ、プラナカンの名残は、都市国家シンガポールのいたるところに見ることができる。プラナカンの古い住宅を改装した博物館「ストレイト・エンクレーブ」は、19~20世紀初頭に繁栄したプラナカン社会の骨董品、遺物、茶などの文化的活動の記録を伝えている。(PHOTOGRAPH BY ORE HUIYING)

シンガポールで生まれ、今も息づくプラナカン文化とは 写真19点

2022.01.02
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
ギャラリー:多様な価値観が融合したシンガポールのプラナカン文化 写真19点(画像クリックでギャラリーページへ)
伝統的な石臼を使ってハーブや香辛料を細かく砕く。(PHOTOGRAPH BY ORE HUIYING)
伝統的な石臼を使ってハーブや香辛料を細かく砕く。(PHOTOGRAPH BY ORE HUIYING)
シンガポール在住のタニヤ・ピレイ・ネアル氏によるプラナカン料理。ネアル氏は現在、インドの影響を受けたプラナカン料理の本を執筆している。(PHOTOGRAPH BY ORE HUIYING)
シンガポール在住のタニヤ・ピレイ・ネアル氏によるプラナカン料理。ネアル氏は現在、インドの影響を受けたプラナカン料理の本を執筆している。(PHOTOGRAPH BY ORE HUIYING)

 1960~70年代、シンガポールのプラナカン文化は絶滅の危機にさらされる。折しも140年におよぶ英国の植民地統治から解放され、シンガポールは近代化に向かって突き進んでいた。そのために、時代遅れの伝統や文化を脱ぎ捨てることをいとわなかった。植民地時代に建てられたプラナカンの建物は、高層マンションや巨大モールに取って代わられ、時間をかけて煮込む伝統料理はファストフードに変わった。

 1980年代になると、古いショップハウスなど建築学的に重要な建物が取り壊され、シンガポールはもはや「アジアのアイデンティティ」を反映しなくなったと、保護活動家や市民リーダーたちは懸念を示した。観光業が衰退したのは、シンガポールが持っていた「東洋の神秘的雰囲気と魅力という側面を自ら取り去ってしまったためだ」とも指摘された。

キャンドルナットのオーナーでシェフのマルコム・リー氏。(PHOTOGRAPH BY ORE HUIYING)
キャンドルナットのオーナーでシェフのマルコム・リー氏。(PHOTOGRAPH BY ORE HUIYING)
プラナカンビーズの専門家アンジェリン・コン氏。ストレイト・エンクレーブ博物館でビーズ教室を開いている。(PHOTOGRAPH BY ORE HUIYING)
プラナカンビーズの専門家アンジェリン・コン氏。ストレイト・エンクレーブ博物館でビーズ教室を開いている。(PHOTOGRAPH BY ORE HUIYING)
2021年8月、ストレイト・エンクレーブ博物館のクラフト教室で、伝統的なプラナカンの服を着て、ビーズを縫い込む女性。(PHOTOGRAPH BY ORE HUIYING)
2021年8月、ストレイト・エンクレーブ博物館のクラフト教室で、伝統的なプラナカンの服を着て、ビーズを縫い込む女性。(PHOTOGRAPH BY ORE HUIYING)

 シンガポール政府の開発と保全を担当する都市再開発局は、世紀の変わり目に建てられた色彩豊かなショップハウスを保存する計画を立ち上げた。ショップハウスとは、中国バロック様式の2階建てから4階建ての狭い住宅で、美しい花模様のタイルと木彫りの雨戸が特徴的だ。1階が店舗になっていて、2階より上が住居になっている。

 そんなショップハウスが立ち並ぶカトン地区の向かいの静かな住宅街に、NUSババ・ハウスと言う博物館がひっそりと建っている。1895年に建てられたプラナカン風の3階建て住宅だが、2008年に改装され、博物館としてオープンした。木彫りの窓と美しい陶器の縁取りが、プラナカンの移住生活から生まれた2000点以上の骨董品、織物、芸術品の展示を引き立たせている。

「プラナカン文化の多様性を強調したいと思っています」と、学芸員のピーター・リー氏は話す。「歴史の見方は一つではありません。様々な物語がそこにはあります。私たちのアイデンティティは固定されてはいません。より多くの人が自分たちの体験を書き残すことによって、プラナカン文化の物語はますますはっきりと見えてくるでしょう」

ストレイト・エンクレーブ博物館で、コン氏のプラナカンビーズ教室に参加する生徒たち。(PHOTOGRAPH BY ORE HUIYING)
ストレイト・エンクレーブ博物館で、コン氏のプラナカンビーズ教室に参加する生徒たち。(PHOTOGRAPH BY ORE HUIYING)
ビーズで作られたプラナカンの女性用スリッパ「カスト・マネク」(PHOTOGRAPH BY ORE HUIYING)
ビーズで作られたプラナカンの女性用スリッパ「カスト・マネク」(PHOTOGRAPH BY ORE HUIYING)
ギャラリー:多様な価値観が融合したシンガポールのプラナカン文化 写真19点(画像クリックでギャラリーページへ)
ギャラリー:多様な価値観が融合したシンガポールのプラナカン文化 写真19点(画像クリックでギャラリーページへ)
大理石をはめ込んだ椅子。プラナカンの人々が、重厚な装飾家具を好んでいたことを示している。(PHOTOGRAPH BY ORE HUIYING)

会員向け記事を春の登録キャンペーンで開放中です。
会員登録(無料で、最新記事などメールでお届けします。

会員登録(無料)のメリット

  • 1ナショジオ日本版Webの
    無料会員向け記事が読める
  • 2美しい写真と記事を
    メールマガジンでお届け

文=RACHEL NG/写真=ORE HUIYING/訳=ルーバー荒井ハンナ

おすすめ関連書籍

観光の力 世界から愛される国、カナダ流のおもてなし

たくさんの観光客、住民の幸せ、持続可能という矛盾しがちな課題を、どうクリアするのか。観光大国カナダの事例にヒントをさぐる。

定価:1,980円(税込)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

Photo Stories 一覧へ