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パタゴニアで、南米のカウボーイ「ガウチョ」の伝統を受け継ぐブロンゾビッチ家の牧場。年に一度開かれる「ラ・イエラ」は、動物たちの数を数え、体の手入れをし、焼き印を押し、去勢手術を施す伝統的なイベントだ。それはまた、家族とガウチョの文化を祝う日でもある。(PHOTOGRAPH BY LUJÁN AGUSTI)

最果ての島で馬と暮らす、南米ティエラ・デル・フエゴ 写真17点

2021.12.30
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ガウチョの暮らし

 パタゴニアには、「馬と一緒にいないガウチョはガウチョではない」ということわざがある。ティエラ・デル・フエゴでは、馬と人間は切っても切れない関係だ。馬は、人間の生存に欠かせないだけでなく、牛を牧草地へ連れて行ったり、所有地を警備するといった毎日の仕事でも重要な役割を果たす。また、ロデオやエスグリマ・クリオーラといった、勇敢さが試される競技でともに戦う同志でもある。エスグリマ・クリオーラとは、人間が馬に乗り、本物のナイフを使って、羊毛のポンチョを盾に戦う格闘術だ。

 現在ブロンゾビッチ家は、乗馬の技術を生かし、所有する馬の群れを活用して観光客を案内している。フレさんの子孫の一人で、経験豊富なガイドのホルヘさんが、馬に乗って観光客を連れ、牧場を取り巻く亜南極の森林を抜け、川を渡り、山を登る。最後に、エスコンディド湖畔でマテ茶とワインを飲み、バーベキューを楽しんで、ツアーを締めくくる。

森へ行く準備をするホルヘ・タグレさんとヴェドラナ・ブロンゾビッチさん。(PHOTOGRAPH BY LUJÁN AGUSTI)
森へ行く準備をするホルヘ・タグレさんとヴェドラナ・ブロンゾビッチさん。(PHOTOGRAPH BY LUJÁN AGUSTI)
エスコンディド湖畔の森の中を馬で移動するブロンゾビッチ家のヴェドラナさん、フアンさん、エスタニスラオさん、アウレリアさん、ジョセフィーナさん、ホルヘ・タグレさん。(PHOTOGRAPH BY LUJÁN AGUSTI)
エスコンディド湖畔の森の中を馬で移動するブロンゾビッチ家のヴェドラナさん、フアンさん、エスタニスラオさん、アウレリアさん、ジョセフィーナさん、ホルヘ・タグレさん。(PHOTOGRAPH BY LUJÁN AGUSTI)
ツアーの拠点になっているブロンゾビッチ家のロッジ。(PHOTOGRAPH BY LUJÁN AGUSTI)
ツアーの拠点になっているブロンゾビッチ家のロッジ。(PHOTOGRAPH BY LUJÁN AGUSTI)

 ブロンゾビッチ家にとって、牧畜は重要な伝統だ。製材所で切り出した木材を運ぶために、1950年代末から雄牛の繁殖を始めた。「父はいつも、125頭の母牛を持つのが理想だと言っていました。その父の仕事を受け継いだ私たちきょうだいは、父の死後にその数字を達成しました。今では、家族が食べ、町で少し売り、観光客に提供できるだけの肉や乳製品が手に入ります」と、ベッキーさんは言う。

 エスコンディド湖畔にある一家の牧場で、観光客はガウチョの生活にどっぷりと浸かり、牛を育てることの大変さを直に体験する。また、牧場では年に一度、牛の頭数を数え、焼き印を押し、タグをつけるイベント「ラ・イエラ」が開かれる。ティエラ・デル・フエゴのガウチョ文化を最も象徴するイベントだ。他にもこの機会に、牛の角を切り取ったり、ワクチンや駆虫薬を投与したり、繁殖の必要がない雄牛を去勢したりする。

エスコンディド湖畔にあるブロンゾビッチ牧場。この囲いの中で、ラ・イエラが開かれる。(PHOTOGRAPH BY LUJÁN AGUSTI)
エスコンディド湖畔にあるブロンゾビッチ牧場。この囲いの中で、ラ・イエラが開かれる。(PHOTOGRAPH BY LUJÁN AGUSTI)

 訪れた人には、肉やソーセージの他、普段口にすることのない牛の腸や睾丸、子羊の肉のバーベキューがふるまわれる。これに豆のピクルスとパセリを使ったソースを添え、アルゼンチン南部のブドウ園で作られたワインを味わう。

 多くの人にとってガウチョの文化は、自然への愛、かけがえのない自由、そしてもてなしや勇気、忠誠、団結の精神といった「アルゼンチン人であることの本質的な価値」を象徴している。どんなに時が過ぎても、ティエラ・デル・フエゴの都市開発がどんなに進んでも、これらの価値は守られてきた。

 少なくとも、これまでのところは。ベッキーさんは次のように話す。「伝統は簡単に失われてしまうものです。若い世代は、牧場で働こうとしません。お金にならないし、仕事はきつい。これが体にとっても心にとっても健康的な生き方であることに気付いていないのです。彼らは現実との触れ合い、あらゆるものとの触れ合いを失いつつあります」

ギャラリー:最果ての島で馬と暮らす、南米ティエラ・デル・フエゴ 写真17点(写真クリックでギャラリーへ)
ギャラリー:最果ての島で馬と暮らす、南米ティエラ・デル・フエゴ 写真17点(写真クリックでギャラリーへ)
長い一日の労働を終えた後、家族と一緒に過ごすひと時。(PHOTOGRAPH BY LUJÁN AGUSTI)

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文=ERICK PINEDO/写真=LUJÁN AGUSTI/訳=ルーバー荒井ハンナ

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