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2021年8月14日に起きたマグニチュード7.2の地震で古い植民地時代の建物が倒壊したハイチ南部ジェレミーの街。しかし、農村部での被害はさらに深刻だ。(Photograph by Andrea Bruce)
カリブ海の島国ハイチは、まるで災害を引きつける磁石のようだ。
2010年の地震は首都ポルトープランスを壊滅させ、30万人の命を奪った。復興が進まない中、政治的な混乱や腐敗も絶えず、人々は苦しい生活を強いられてきた。
そこへ、自然災害が立て続けに発生した。
8月14日にこの国を襲った地震はマグニチュード7.2を記録。地震の後には熱帯性暴風雨「グレース」が襲来し、過酷な状況に拍車をかけた。直撃こそしなかったものの、絶え間なく降り続く雨は洪水を引き起こし、救助活動を待つ被災者に一層の負担を強いた。
22日のハイチ当局の発表によると、死者は2200人を超え、行方不明者も344人を数える。負傷者は1万2200人以上、損傷または破壊した家屋は12万9900戸を上回る。当局はまた、最も被害の大きかった地域の約68万4000人が緊急の人道支援を必要としていると報告している。
この国では普段から医療や支援が不足しているうえ、少なくとも44の医療機関が余震の影響を受けている。医療従事者たちは、中庭や寄宿舎だった建物を転用して、患者の治療にあたっている。
ハイチ南部の半島に位置するジェレミーやレカイといった街では、かつて建物があった場所に瓦礫の山が積み上がっている。かろうじて立っている大聖堂は屋根が剥がれ落ちて空が見えている。農村地帯でも、壁が吹き飛ばされた家屋や、通行ができない道路もある。
大統領の暗殺、ギャングの台頭
相次ぐ自然災害に、この国の多くの人々は敗北感と虚脱感に苛まれている。
「地震や暴風雨のニュースを聞くたびに、自分の中で何かが爆発してしまいそうになるのです」と、5人の子供を持つマリー・ロズリーヌ・マセナさん(56歳)は言う。「目には涙があふれ、もうこれ以上耐えられないと感じます」
悲惨な状況に拍車をかけているのが、大統領暗殺によってさらに悪化した政治的混乱だ。ハイチのジョブネル・モイーズ大統領は7月7日、ポルトープランスの丘の上にある私邸で、銃の乱射を受けて殺害された。
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